「GPLの守護神」E・モグレンが守り続けるもの - (page 3)

文:Stephen Shankland(CNET News.com)
編集校正:坂和敏(編集部)
2006年01月30日 16時02分

--Microsoftがすべての製品にDRMを搭載することは想像に難くありません。バージョン3が2つの世界を完全に分離しようとしているのは、フリーソフトウェアの世界からDRMを締め出すためですか。

 ユーザーがデータを管理・修正することを禁じ、限定的な方法でしかデータを交換できないようにするDRMは、フリーソフトウェアの原則--つまりユーザーは自分のコンピュータと技術規定を管理できなければならないという原則と根本的に矛盾しています。われわれは何も、映画産業が反発するものを作ろうとしているわけではありません。映画産業の方が、われわれが反発するものしか承諾しないと言っているのです。

 「あなた方がそういうなら、私は私の一番の関心事である人々の自由を守らなければならない」と、Stallman氏はそういっています。

 こうした姿勢は、その他の企業から、ある程度の批判を受けることになるでしょう。これらの企業は板挟みの状態にあり、われわれが自分の立場を声高に主張することを歓迎しないかもしれません。しかし、彼らを痛い目に遭わせているのはわれわれではなく、Disneyです。Walt Disneyの前CEOは連邦議会に出席し、Apple Computerのビジネスモデルは著作権の侵害行為だと証言しました。

 われわれがはっきりさせたいのは、彼らにはIT企業を痛めつけたようなやり方で、全世界のユーザーを痛めつける権利はないということです。もしIT企業がGPLの反DRM条項に文句をつけるなら、われわれはこう答えます。Walt Disneyやその他の企業がわれわれのユーザーを攻撃している以上、われわれはそれと同じくらいの激しさで、ユーザーの権利を守なければならないのだと。

 ご存じの通り、今日ではフリーソフトウェアを利用せずに、劇場公開用映画を製作することはきわめて困難です。映画会社は日常的にフリーソフトウェアの恩恵を受けているのです。フリーソフトウェアがなければ、映画会社は最後の頼みの綱である最新の特殊効果を実現することすらできません。彼らは自分たちのビジネスがフリーソフトウェアの恩恵に浴していることを認識していながら、フリーソフトウェアに関するユーザーの権利を尊重することを未だに拒否しているのです。

 Stallman氏は、世界は10年前に特許問題に注目しなければならなかったように、この(DRM)問題に注目しなければならないと明言しています。これがきわめて強硬な姿勢であることは認めますが、理由のない攻撃ではありません。これはわれわれが最も大切にしている人々の権利に対する攻撃への正当防衛なのです。

--しかし、反DRMの姿勢を明確にすると、非フリーソフトウェア--たとえばWindowsに利益をもたらすことになるのではありませんか。新しい反DRM条項によって、Linuxが利用できないようになれば、DisneyはWindowsに乗り換えるかもしれません。

 実際には、Disneyはもっと難しい状況に置かれています。現在のDisneyは、どう見ても不公平なふるまいをせざるをえない。フリーでないソフトウェアを使って、特殊効果やレンダリングを処理できるなら、Disneyはおそらくそうしているでしょう。そうすれば、少なくとも矛盾はなくなります。

 自由から生まれたソフトウェアの利点を享受しながら、ほかの人がその利点を享受するのを禁止しようとするのは、どう考えても不公平です。彼らはイメージ作りのプロです。美しいイメージを大量に生産しなければ、これほど明確な矛盾から人々の目をそらすことはできません。

--GPLバージョン3に関する議論はどの程度進んでいるのですか。これから大きな変更が加わる可能性はありますか。それとも、9割方は完成しているのでしょうか。

 現時点では何ともいえません。Richard(Stallman)と私は多くのことを知っていますが、すべてを知っているわけではありません。

--Richard(Stallman)は今朝、特許の問題に関する限り、交渉の余地はあまりないとはっきり述べていました。

 変わらないのは倫理であり、ユーザーの自由に対するコミットメントです。ユーザーはわれわれが知らないこと、世界の状況や、フリーソフトウェアの利用と配布の実態を教えてくれるでしょう。ユーザーはわれわれが気づいていないライセンスの弱点を知っているかもしれません。バグや、思わぬ見落としを教えてくれるかもしれません。その結果、いくつかの変化が起きるでしょう。Stallman氏がわれわれの原則は変わらないというなら、私はそれに従うのみです。私は13年間にわたり、彼の法律顧問を務めてきました。その間に原則が変わったことは一度もありません。14年目に変わると考える理由はないと思います。

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