グーグルの中国向け新サイト--検閲の実態を探る - (page 2)

文:Declan McCullagh(CNET News.com)
翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006年01月30日 10時44分

 Googleは25日に行ったCNET News.comへの回答の中で、同社のフィルターは「(中国の)法律および規制を遵守する上で要求される最低限のサイトへのアクセスを遮断することを目的としている」と説明していた。

 さらに同社は、2回目の回答で次のように付け加えた。「大半の新サービスと同様に、われわれはサービスを開始した後、直ちにバグなどの技術的問題の発見/修正に取り掛かる。Google.cnも例外ではない。今後も引き続きフィルタリングプロセスの精度向上に努め、サイトのフィルタリングを必要最低限に止めること、ならびに検索結果に対するフィルタリングが行われた全てのケースでその旨の告知が適切に表示されることに確実を期していく」(Googleはアクセスを遮断しているウェブサイトのリスト開示を拒否している)

 Googleは、検索技術が他社より優れていることを誇りにしている。また同社は1260億ドルの時価総額を持ち、コンピュータ科学の博士号を持つ従業員の割合では世界有数の企業であることを自慢にしている。そんな同社にとって、バグだらけのフィルタリング技術を実装したこの中国向け検索サービスは、めったにない汚点としてひときわ際立っている。

 中国政府は2000年9月に、インターネットのコンテンツプロバイダーに対して、「国家の威信や利害を損なう」可能性のある情報や、「邪悪なカルト」を助長したり、「社会の安定を害する」ような情報の制限を義務づける政令を発した。ただし、アルコールや未成年者の妊娠に関連するサイトは、政府の定めた規制対象には含まれていない。

 Google.cnの検索結果から削除されたウェブサイトのなかには、中国共産党が快く思わない話題を扱っているものが多い。天安門での抗議や虐殺のほか、政治批判全般、チベット、台湾、法輪功(中国政府にカルトとして糾弾されたこの団体では、中国の伝統的な呼吸法=気功に瞑想を組み合わせたエクササイズを広め、勢力を増してきている)関連のウェブサイトもGoogle.cnの結果から削除されている。一方、ジョークやアルコール関連のサイトなど、削除される理由がよくわからないものもある。

 たとえば、Google.cnではラム酒などの蒸留酒を扱う酒類メーカーBacardiのウェブサイト「Bacardi.com」が表示されない。それに対し、YahooやMSNの中国向けサイトでは、検索結果にBacardi.comが表示される。

 「 Lesbian.com」の場合も同様で、YahooやMSNでは表示されるが、Googleでは見つからない。また「Neworder.box.sk」というコンピュータセキュリティ企業のウェブサイトや、出会い系サイト「Date.com」を検索結果から削除しているのもGoogleだけだ。

 この点について、Date.comのMichael Ellis(プライバシー/セキュリティ担当マネージャ)は、「われわれは、どちらかというと北米および欧州の市場を重視しているが、他の地域にも事業を拡大してきているため(Google.cnで表示されないことを)わずかに懸念している。われわれにとって、中国は大きな潜在力を持つ市場だ」と述べている。

 CNET News.comでは、中国における検索結果の検閲の有効性をテストするために、独自に作成したコンピュータプログラムを使って、4600のドメイン名をチェックした。このドメイン名のリストは、 Open Net Initiativeが以前、中国のフィルタリング技術をテストした際に使用したものだ。われわれは、Google.comやMSN.comではインデックス化されていながら、両社の中国向けサイトでは表示されないものを見つけだした。またYahooについては、同社の中国向けサイトが頻繁に応答しなくなったことから、一部のホストだけをテストした。なお、このプログラムはドメイン名しかテストせず、個別のウェブページについては対象としなかった。

 このテストの結果、削除したサイトがいちばん多いのはGoogle.cnで、テスト対象となったドメイン名の約13%が除外されていることが分かった。それに対し、MSNで削除されたドメイン名の割合は10%だった。また、ポルノや政治関連のサイトはどちらの検索結果からも削除されているが、Google.cnではそのほかにユーモアを扱ったサイトやホモセクシュアルに関するサイトについても削除されているものの数が多かった。また、アルコールや出会い系、マリファナに関する情報を遮断しているのはGoogle.cnだけだった。

 米ラトガー大学のNetwork for Family Life Educationディレクター、Danene Soraceは、同大学が運営する「Sex, etc. 」サイトが、Google.cnの検索結果から除外されていることを残念に思うと述べている。「性に関連する医学的な情報は、ポルノと一緒にされることがよくあり、そこを区別するのが難しい。われわれのサイトでは性的健康に関する話題を扱っているが、この種のフィルタリング技術をつかわれると、間違って検索結果から排除されることがよくある」(Sorace)

 Google.cnの検閲が過剰であるとは限らない。他の検索エンジンと同じく、チェックが甘いケースも多くある。。たとえば、マリファナ関連「HighTimes.com」というサイトは検索結果から削除されているものの、同サイトの別のドメイン名である「420.com」は除外されていない(「420」はマリファナの使用を指すスラング)。また、「Bacardi.com」が表示されない一方で、同社のフランス、ドイツ、カナダ、イタリアの各ドメインは表示された。さらにPenthouse.comやPlayboy.comは表示されないが、両紙の名前を検索するとAmazon.comにある購読申し込みページへのリンクが見つかった。

 「Human Rights Watch」という団体のアジア部門でシニアリサーチャーを務めるMickey Spiegelは、Google.cnについて、「表現の自由という点からみると一歩後退といえる」と述べている。なお、同断対のサイトは、GoogleとYahooの中国向けサイトでは排除されているが、MSNでは表示される。

 「(Google.cnがこうした検閲を行うことにより)ある意味で、中国の人々が今日自分たちの直面する問題について自分の頭で考える能力をどんどん失っていくことになる」とSpiegelは言う。「彼らは限られた種類の情報しか手にできず、それが彼らの世界に対する見方を色づけする。これは大問題であり、中国のイメージに汚点を残すものだ」(Spiegel)

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