かわいらしく愛嬌のあるロボット犬が戸口の当たりにちょこんと座り、言葉や芸を少しずつ覚えていく。彼らに愛情を感じるようになったと思ったら、その存在が抹消されてしまう--昔からよくある話しだ。
コスト削減および組織改革を進めるソニーは、製品としては販売されなかった「QRIO」という名称の高価な人型ロボットなどとともに、ロボット犬「AIBO」の製造中止を決めた。
ソニー米国法人の広報担当によると、同社はAIBOの販売を開始した1999年以来、あわせて15万台以上を販売したという。だが現在、同社はかつてない緊縮経営を強いられており、ロボット部門もその対象となった格好だ。
同社広報のKirstie Pfeifferは、「ソニーの中核事業は、エレクトロニクスやゲーム、エンターテインメント分野だが、中でも採算性が高く、戦略的な成長が見込めるものに重きを置いている。こうした観点から、AIBOの製造中止を決めた」と述べている。
およそ2000ドルもするソニーのロボット犬AIBOは、消費者向けの看板製品というよりは、珍しいアイディア商品として認識されてきた。とはいえ、これを模倣した安物の類似製品が大量に出回り、一部の大手企業もそうした流れを追随するなど、大きな話題にはなった。
発表当時からAIBOには、「Memory Stick」および独自の組み込みオペレーティングシステムといったソニーの技術や、同社の研究開発施設で生まれた先進的なロボット工学テクノロジーが早々と用いられていた。
AIBOはその後もさらなる進化を遂げ、最新版では約1000語の言葉を話せるようになった。また、(理論上は)所有者の命令や動きに適切に反応したり、ブログを書いたり、目のうしろに取り付けられたカメラで写真を撮ったり、音楽を再生したりすることも可能だった。
また、自分のAIBOが撮影した写真を公開するオンラインサイトが立ち上げられ、ファンの輪も広がった。もっともそうした写真のほとんどは、AIBOの小さな体からすれば仕方のないことだが、人の足首やテーブルの脚ばかりだった。
ソニーがロボット分野に見切りをつけたことで、iRobotなどの米国ロボットメーカーが一応の勝利を収めた格好になった。大半の米国ロボットメーカーは、数年前にロボット企業に対する市場の需要は非常に小さいと判断し、研究開発の対象を、日常業務や単純作業、人間には危険の多い仕事などをこなすロボットに切り替えた。例えばWorkhorse Technologiesは、閉鎖された坑道の調査に用いるロボットを開発している。
iRobotのCEOであるColin Angleは、2004年に受けたインタビューの中で、「『宇宙家族ジェットソン』にお手伝いロボットのRosieが登場して以来、ロボットが次の大きな波になると考えられてきたが、実際にはビジネスにならなかった。リーズナブルな価格のロボットを製造することは、非常に難しい」と語っていた。
なお、オンラインの「SonyStyle」や他の小売店では、在庫がなくなるまで、AIBOの販売を続ける。ソニーは、AIBOの開発プロジェクトで得た知見を今後の製品開発に活かしていく意向だが、AIBOやQRIOが復活することはないとPfeiferは述べている。さらに、同社は最新版のAIBOについては今後少なくとも7年間サポートを継続するとPfeiferは付け加えた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」