若者--新時代の到来を告げる「ミレニアルズ」 - (page 3)

文:Declan McCullagh(News.com)
翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006年01月12日 09時00分

 IconocultureのSteuerは、ニュースを消化する方法が双方向性と直結するようになっていると指摘する。「ブログやMySpaceがこれほど騒がれているのは、これがマスメディアだけでなく、双方向メディアとも結びついているからだ」(Steuer)

 もともとインディーズ音楽のコミュニティとして始まったMySpaceは、わずか2年のうちにひとつの文化現象となり、10代の若者が容姿や仲間からのプレッシャー、麻薬、恋愛といった、誰もが成長の過程で経験する問題と格闘する場になった。MySpaceのようなソーシャルネットワークは、若者が自分のアイデンティティを模索し、新しいアイデンティティを試す格好の場となっている。

 「昨年はAIMに夢中だったけど、今年はMySpaceと男の子とのおしゃべりが楽しい」と6年生のSarahはいう。「でも、相手が誰かは気を付けないといけないの」(Sarah)

 学校側も、こうしたソーシャルネットワークが子どもたちの生活で重要な役割を果たしつつあることを認識している。しかし、その影響は必ずしも好意的に受け止められているわけではない。

 多くの国語教師は、インターネットは総じて、子どもの成長に害を及ぼすものだといってはばからない。ウェブとウェブ上にある数十億のページには、文章やコミュニケーションに関する共通の基準がないため、同音異義語の正しい意味や、大文字、コンマ、セミコロンの使い方をいい加減に覚える可能性が高いと教師たちはいう。

 生徒と親に配慮して、匿名で取材に応じたサンフランシスコ・ベイエリアのある教師は、「これは言葉の通俗化だ」と憤る。「子どもたちは約束事は無視してもいいと考えるようになる」

 すでに定着している技術を非難しても意味がない、という学者もいる。こうした学者たちは、学校はインターネットを学習に活用する方法を、もっと積極的に模索すべきだと主張する。

 7年生と8年生に社会科を教えているAndrew Davisは、非公式な形で、授業に技術を取り入れる方法を模索している。社会科の授業に「学習用wiki」を取り入れ、生徒が共通のテーマについて、簡単に共同研究ができるようにすることはそのひとつだ。

 たとえば、イスラム世界に関する用語集をwikiで作り、生徒に60個のキーワードを与え、その定義を調べたり、議論をさせたりする。wikiは投稿の履歴が残り、編集もできるので、教師はどの生徒がプロジェクトのどの部分に取り組んだのかを把握し、それをもとに成績を付けることができる。

 PC環境の整っている学校では、「First Class」と呼ばれる電子メールシステムが普及しつつある。このシステムを使えば、生徒をグループに分け、各グループにメールで課題を送ることができる。生徒からの返信はばらばらに届くのではなく、スレッド形式で表示され、全員が見ることのできるファイルにまとめられるので、生徒はスレッドをたどりながら情報を読む方法を身につける。

 「今の子どもたちは、てんでに新しい自己表現の方法を学んでいるので、いずれは書くことの定義が変わるだろう。今では学校以外にも、読み書きを学ぶ機会がある」とDavisはいう。「インターネットには無限の可能性がある。しかし、優秀な教師たちは仕事に追われ、それを模索する時間がない。私はインターネットが誤った形で使われ、20年後に現在のテレビのような存在になることを懸念している」(Davis)

 しかし、文化の変容を観察している人々は、必ずしもそれを最悪の事態とは考えていないようだ。「Everything Bad Is Good for You」の著者Steven Johnsonは自著のなかで、ビデオゲームやリアリティTVなど、ポップカルチャーの「悪玉」と考えられているものが、実際には人間の知性を向上させていると断言する。同氏はその理由のひとつとして、デジタルの双方向性が人間に絶えず意思決定を求める点を挙げている。

 「何十年もの間、大衆文化は多数派の基準に合わせて、低俗化する運命にあると考えられてきた。それはおそらく『大衆』は単純でくだらない娯楽を求める生き物であり、大手メディアは大衆が望むものを与えると考えられていたからだろう。しかし、現実にはそれと逆のことが起きている。文化の知的水準は下がるどころか、上がっている」とJohnsonはいう。「概していえば、これは世界を良くする力だ。人間の認知機能は低下しているのではなく、むしろ向上している」(Johnson)

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]