wiki--集団による編集が変える報道のあり方 - (page 3)

文:Daniel Terdiman (News.com)
翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006年01月06日 09時00分

 機会は起業家精神を育むというが、この真理はwikiにも当てはまる。SocialTextやJotSpotなど、企業向けのwikiソフトウェアを提供する企業も登場している。

 企業内でwikiを利用する場合、会社側が言論統制を行うのではないかという懸念が出るのは避けられないが、wikiはその性質上他の技術よりも商業的な圧力を受けにくいといえる。wikiでは個人が文字通り最終的な意見を述べることができるからだ。

 「wikiはユーザーを尊重し、大きな権限を与え、コミュニティに自立性を与える」とWalesは言う。「wikiの成功の秘訣は、許可モデルから説明責任モデルに移行したことだと思う。これは記事を編集できる、できないという問題ではない。編集結果が記録され、変更内容に問題があれば、それが全員の目にさらされるということだ」 (Wales)

 ブログなど、短時間で更新される情報やコミュニティは他にもあるが、wikiとそれらとの決定的な違いは、すべての変更が履歴に残るというwikiの透明性にある。また、他の技術と比べ、wikiははるかに拡張性が高く、参加型の性質を持っていると考えられている。

 たとえば、Wikinewsがロンドン同時テロをどう伝えたかは簡単に調べられる。リンクをたどるだけで、最初の記事が書かれた後にどのような更新が加えられたかをすべて見ることができる。リバプールストリート駅で起きた最初の爆発に関する速報から、最後の総括記事に至るまでに、報道の内容がどう変化したかを知りたいのなら、数百回に及ぶ変更履歴を参照すればよい。それぞれの変更が誰によって、いつ加えられたのかも公開されている。

 wikiを使って作成されたものは、ほぼ例外なく、こうした特徴を備えている。wikiがユーザーに提供しているのは、どの技術も実現できなかったもの--つまり、無限に編集することのできる単一の情報源だ。

 「これ以外に、この種の共同作業を実現する方法はない」とWikinewsの管理者を務める27歳のNathan Reedはいう。

 新しい出来事を伝え、情報源へのリンクを提供するという点では、ブログやニュースグループ、メーリングリストもWikinewsと変わらない。しかし最新の情報を--もとい、最新の情報だけを1カ所で提供することができるのはWikinewsだけだ。

 「KatrinaHelpは組織の垣根を越えるものだった。だからこそ、人々の役に立つことができた」とKatrinaHelp.infoのKlineはいう。「Wikiは非常に柔軟だ。救援活動では赤十字が重要な役割を果たしているが、赤十字はあくまでもひとつの組織にすぎない。われわれは情報センターとして、さまざまな情報源にアクセスするための出発点を提供することができた」(Kline)

 従来のメディアに対するwikiの優位性は、ジャーナリズムの世界でも認められつつある。Online Journalism Reviewの編集者、Robert Nilesによれば、同社はカトリーナの上陸後、重要な情報を1カ所で提供するための手段としてwikiを導入したという。

 「wikiを導入したのは、われわれの読者の多くが、複数の媒体から情報を得ていたからだ」とNilesは言う。「ならば、wikiを設置し、読者が自分で情報を集められるようにするのが合理的だ。ひとりの記者、または記者のチームに任せるより、wikiのほうがこの任務には適していた」 (Niles)

(次回は「タグ--ロボット検索への挑戦」をお届けします)

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