2006年がどのような年になるかと考えると、やはり、「放送通信の融合」というテーマがどこに向かうかが決定される年としてとらえることができるだろう。
すでに内閣府の規制改革・民間開放推進会議がその第2次答申で「生活・ビジネスインフラの競争促進」の対象領域として公共放送と地上波放送を掲げており、それを受けて放送の規制面での変化が始まる。次いで、6月には竹中平蔵総務大臣の私的な懇談会である「通信・放送の在り方に関する懇談会」が方向性を出すことで、放送規制改革がNHKを皮切りにスタートするだろう。結果、これが「放送通信の融合」のあり方の議論へとつながっていくに違いない。
放送と通信のあるべき区分はというと、番組と広告とが時間帯によって組み合わされるという「編成」があるものが「放送」であり、任意の映像コンテンツを広告やキャンペーンなどのコンテクスト(文脈)、あるいは検索エンジンによって選択できるようになっているものが「通信」ということになる。これは視聴者のニーズの違いに基づくものであり、これによって映像視聴スタイルが決定されるのが望ましいはずだ。少なくとも、有料・無料という区分は、すでに提供開始されているUSENのGyaoやソフトバンクとヤフーの合弁会社であるTVバンクなどといった、インターネット上での映像コンテンツ配信サービスに広告が本格的に出稿されるようになることで、無効化されていくに違いない。
現状では、B-CAS(BSデジタル放送を視聴するために必要な固有のIDを持つカード)を利用するかどうかで映像コンテンツ視聴における放送と通信の区分がなされるという暗黙の前提があるが、「融合」という視点から見つめるとき、その区分はあまり望ましくないというのは明らかだろう。
このような制度論の行き先という点で2006年、特にその前半は注目すべき年となるに違いない。それに先行して現実に放送通信の融合として登場されるサービスもいくつかあり、その行方は「融合」のあるべき最終形を占うものとして注目できよう。
まずは、すでにauから端末が販売されたワンセグ放送であろう。2006年4月1日に正式スタートする移動体向けデジタル地上波放送「ワンセグ」では、当面、テレビ受像装置と同じ=サイマル編成で番組は提供される。が、データ放送部分を活用し、これまで必ずしも成功しているとはいえないデータと番組の新しい融合形態が模索されるに違いない。ワンセグから半年遅れで導入されるモバイル番号ポータビリティサービス(MNP:異なる携帯電話会社へと乗り換えても同じ電話番号を引き続き利用できるサービス)にむけた各社の端末の魅力強化という点で、どう利用されていくだろうか。
ただ、YOZANが提供するWiMAXをはじめとした高速無線ネット接続サービスが開始されたことで、今後、携帯電話の優位性がどこまで続くのか不透明になる可能性が高いが。
同じく移動体向けには、すでに2003年10月から試験放送が開始されているデジタルラジオの動向も注目される。アナログラジオは存続したまま、データや映像の付加を売り物とした「モア・チャンネル」として位置づけられたデジタルラジオが、インターネット上での音楽配信サービスの活性化を受けて、そのあるべき姿を再考することになるからだ。
他にも、サーバ型放送の実証試験やIPマルチキャストを利用したデジタル地上波放送の同時再送信実験なども行われる予定だが、これらサービスの開発には不可欠の最終的なゴールイメージ、そしてビジネスモデルからのフィードバックが欠如した状態が続いている。これまでの標準化のプロセスとは異なる進め方の模索も含めて、2006年、幅広い視点から「融合」が語られることを望みたい。
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