ブログなどを散見するにGR Digitalの評価は非常に分かれている。GR Digitalが初めて予告されたのが、独ケルンで毎年開かれる世界最大の映像機器の祭典 Photokina 2004だった。以来、その前期待ぶりは異常といえるほど高くなる。
いまの評価のブレはその反動だともいえるのかもしれない。期待の末、GR Digitalの魅力をスペックのみで語り、実際以下に低い評価を下している人がいたら、とても残念なことだと思う。「写真は引き算」という言葉がある。
モチーフを強調するためには余計なものを排除することがとても大切だ、という教えなのだが、GR Digitalの設計には実にこの引き算の発想が利いている。結論から言うと、GR Digitalは一台で何にでも撮れますという万能カメラではない。ある機能を戦略的に割引き、そして最も強調したい部分にコストをかけた結果、撮るモチーフは選ぶもののスナップ撮影に特化したスペシャリティーカメラ。それが GR Digitalなのである。今回はこの、戦略的な引き算の発想、に着目しレビューをしていきたい。
搭載されているGR LENS 5.9mm f2.4は、35mm銀塩カメラ換算焦点距離で28mmの単焦点レンズだ。特殊低分散レンズ1枚とガラスモールド非球面レンズ2枚を含む、5群6枚構成を採用しているという。
このレンズの特徴的な写りとして、周辺光量が若干減ることがあげられる。空を写したときによくわかるのだが、非常に写真的な好ましい雰囲気が出る。28mmの単焦点、これこそGR Digitalの最大の特徴であり、引き算的なコンセプトの出発点だと思う。同じ技術条件ならば、ズームレンズよりも単焦点レンズの方が描写力を向上させることができる。多機能重視の風潮の中で、あえて単焦点レンズの描写力を選んだリコーの心意気を評価したい。
例えば、それは逆光の強さであり、ゆがみの少なく、端まですっきりピントが合った画像であり、A1プリントをも対応できるカメラとして結実している。
35mm判カメラ換算28mmという画角を単焦点レンズで実現しているカメラというのは、中堅以上のデジタル一眼とGR Digitalくらいしかない。
GR Digitalは、1/1.8型有効画素数約813万画素CCDと、新開発画像エンジン「GR ENGINE」を搭載する。GR ENGINEの絵作りは非常にポジフイルムっぽい仕上がりだ。特にオートでも暗部を潰さずに、しかし空が白く飛ばない露出設定。青空が当たり前のように青い青空に写る、絶妙な露出コントロールはすごいの一言だ。
ただ、どうもパソコンで見ることに合わせた絵作りのために、デジタルカメラで撮りましたーという、 原色が派手めな仕上がりの写真になりがちだ。個人の好みだが、画像設定「軟調」の方が、落ち着いた銀塩写真ぽい仕上がりになるようだ。
スペックが発表になった時に、一番よく聞かれたのがAPS-CサイズのCCDを採用しなかった失望の声だった。しかし実際に使ってみると、 CCDが小さいことが気にならないほどの画像ノイズが少ない。私見だがISO200までなら常用可能に思う。
CCDを小型にしたことで、背面液晶を見ながら写すという、ライブビュー撮影ができる設計的な余裕ができた。ライブビューができるといううれしさは、背面液晶で直接被写体やヒストグラムを確認しながら、フレーミングやフォーカスはもとより、ホワイトバランスや露出もマニュアルで操作できることなのだ。
ライブビューによる撮影設定を採用したことで、デジタル一眼レフにはけっして真似のできない撮影が可能なカメラになっている。
背面液晶が非常に大きく、視野率100%のライブビューがうれしい。最大輝度にするショートカットもある。
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