ベンチャー企業の代表者が解くWeb 2.0と経営の本質 - (page 2)

別井貴志(編集部)2005年12月07日 23時05分

一番重要なのは価値あるデータベース

内藤氏:僕らも2005年の年初ぐらいに流れが変わってきているなと感じて、春ぐらいから密かに社内10人ぐらいで、いろいろな研究開発にあたってきました。その後に結局Web 2.0の話が出てきました。そして、ブログやRSS、AJAXといったキーワードがWeb 2.0だというように取り上げられていますが、僕たちが定義したのは、ちょっとだけ違います。世間ではいま「これはWeb 2.0っぽいサービス、これはWeb 2.0っぽくないサービス、どっちなんだろう」といった話がありますが、本質はそこじゃないでしょう。

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「Web 2.0のビジネスは3つのポイントが必須」とドリコムの内藤氏

 僕たちが考えた本質は3つあります。1つはデータベースという部分が一番大きなポイントだと考えています。

 何のデータを企業がどういうかたちで保有しているのかということです。Web 2.0的な会社の代表としてGoogleが挙がっていますが、それは検索エンジンの会社だからだとか、AJAXをよく使っている会社だからだとかいうわけではありません。ある分野のデータに関してはGoogleがもっともデータを保有しているという状況がその背景にあるからでしょう。

 2つ目としては、そのデータベースからAPIというかたちで、どのようにそのデータをサードパーティの人たちに使っていただく環境を用意するかということです。データベースを保有して、それを自社だけで使っている会社はたぶんその次の世代に入れないと思っています。それは、自分たちで作っていく限界というのがどうしても出てきて、サードパーティにどう開放していけるか、そこに思いっきり予算も含めて懸けられるかが鍵となるでしょう。

 3つめが、マイクロアドバタイズメントです。結局サードパーティにAPIを公開することで、自社のデータベースにいろいろなアクセスがあってさまざまなサービスが出てくるでしょうから、全体としてはトラフィックがすごく上がっていく状況に陥っていくと思います。そうすると、対処するためのコストがかかり、赤字になっていくこともありえます。

 そこで、マイクロアドバタイズメントという小さい広告をどれだけ集めてきて、そのデータベースにひも付けられるかが重要になってきます。それがないと、Web 2.0っぽいサービスをやっているけれども、すごく負荷が高くてサーバをたくさん抱え込んでしまって何も利益がでずに、場合によっては第三者のほうが利益を上げるという環境に陥ってしまうことにもなりかねません。

 この3つのポイントは何を見ているかというと、メインはサードパーティです。他者に何を提供していけるかが重要なのです。サードパーティの役割というところは、そのAPIを使って何をしていくかというところもありますが、Mashup(マッシュアップ)という単語に現れていると思いますが、あるAPIのデータを取ってきて、そのほかのサービスのAPIからもデータを取ってきて、それを元に第3のサービスを作っていくというのがサードパーティの役割になっていくのではないでしょうか。

Web 2.0はGoogle帝国主義を進める懸念も

西川氏:僕もWeb 2.0というバズワードというかキーワードに気がついて自分なりににわか勉強もしました。簡単に言うといけてるサービスとかトラフィックを急激に集めているサービスだとかをいろいろと最大公約数的に抽出したら、こういう特色があるとマスメディア的に整理されて、Web 2.0というかたちでみんなに提示されたかたちでしょう。それで世の中でインターネットをよくわかっている人たちに「おお、なるほど。そうだな」というのがWeb 2.0のトレンドだと思います。

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「何でもやってしまうGoogleに危機感も」と、ネットエイジグループの西川氏

 その中で、僕たちはRSSやブログ関係のビジネスをいくつかやっていますが、実は僕もTim O'Reilly氏の論文にあるいろいろなポイントなどを見たときに、一番Web 2.0で大切なのは、内藤さんがおしゃったことと相当重なっています。サービスの特徴としては、まず非常に価値の高いデータベースを持っていること、もしくはそういったデータベースを作り出す、CGM(Consumer Generated Media)も1つのデータベースの集積になるかもしれません。あらかじめ膨大な労力がかかるかもしれないけれども、そうしたものをきちんと持っていて、それをAPIで開放して他の人たちに使わせて新しいサービスが生まれていくということでしょう。

 それをいろいろ組織的にやっている代表例がGoogleだと思います。シーネットネットワークスジャパンが11月18日に開催した検索サービスにフォーカスをあてたカンファレンス「CNET Japan Innovation Conference 2005 Autumn 次世代ウェブの検索サービスを探る」(関連記事)に行ってみたのですが、やはりGoogleがいままでやってきて、今後もやり続けていこうとしていることがすべてこうしたトレンドに乗っているので、少しうがった見方をするとWeb 2.0のトレンドというのはGoogle帝国主義がどんどん実現するのではないかと一瞬思ってしまうぐらいGoogleはなんでもやってしまっていることを感じました。

 たとえば、GoogleマップのAPIを利用して不動産ベンチャーサービスなどが展開されていて、しかもやろうと思えば1カ月程度でサービスが作れてしまうというものもたくさんあります。そうしたGoogleのAPI無料開放などの方針が突然変更された瞬間に、そうしたベンチャーの存在意義がどうなってしまうのかというような生殺与奪の権を握られている感じがします。それはいくら何でも厳しいと考える。Mashupという言い方が一番適切だと思いますが、他者との連携がものすごく重要になってきていると考えます。

 Web 2.0のキーワードにもう1つロングテールというのがありますね。ネットエイジの社内でも、たとえばRSS広告社の代表取締役である田中弦氏などが、1年半ぐらい前からロングテールが騒がれ出して、それでプランを出していまRSS広告の事業を展開しています。Googleも当然ロングテールの代表例ですね。いわゆる大企業の大きい予算を取るベンチャーではなくて、無数の細かい売り上げを積み上げていくベンチャーが2.0的だと思います。

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