ブロードバンド回線の高い普及率を誇る日本において、ADSL部門で実績を築いたイー・アクセス。2003年よりモバイル事業への参入を目指して活動を続け、2005年11月には子会社のイー・モバイルが携帯電話事業への新規参入が認められた。すでに飽和状態とも言われる携帯電話市場でどのように市場を切り開くのだろうか。11月29日から30日にかけて東京都内の秋葉原コンベンションホールで開催された「mobidec 2005」のセッションで、イー・モバイル執行役員研究開発本部長の諸橋知雄氏が語った。
諸橋氏は、ユーザーが求める快適なモバイル環境を構築するために取り組まなければならない課題を複数掲げた。これらは固定系ブロードバンドと同レベルのサービスを提供し、PCブロードバンドとモバイル間のギャップを埋め、シームレスな通信環境を築く上で不可欠だという。
まず、「モバイル環境での高速化」。携帯電話を中心としたモバイル環境では固定ブロードバンド環境と比較して、提供サイトや情報源の量、品質の点において不十分だと諸橋氏は指摘し、高速化によってこのギャップが埋まると話す。
次に「利用環境の連続性」。現在、外出先でPCからメールやウェブブラウジングなどのデータ通信を利用しようとすると、公共無線LANスポットを探すことからはじめなければならず、移動しながらの利用ができない。携帯電話を使えば移動も可能だが、通信速度は最大でも2.4Mbpsとなっており、インタラクティブ性に欠けると指摘した。
そして、「リーズナブルな価格」。固定系ブロードバンドの料金が定額で低価格なのに対し、モバイルブロードバンドのパケット制課金はユーザーにとって手軽な料金設定とは言いがたいという。他国に比べて日本はモバイルの利用水準が低いと諸橋氏は語り、低価格でわかりやすい料金設定を示していくことで向上していくとした。
諸橋氏は、番号ポータビリティ(MNP)導入とモバイル通信事業者の新規参入は、市場活性の起爆剤になると語り、その根拠として既にMNPが導入されて市場が活性化したイギリスの実例をあげた。
アンケートによれば、MNPによって通信業者を乗り換える意向がある国内のモバイルユーザーは全体の7割という。モバイル業者の新規参入によって提供される選択肢が、ユーザーに事業者の乗り換えを促し、市場を刺激するというのだ。ただし諸橋氏は、各社の競争で低価格を実現することだけが、市場の活性化ではないとも話す。ユーザーが目的に応じて複数台端末を所有する流れを作ることで、モバイル業界の持つ潜在的な市場を引き出せるとした。
イー・アクセスの視野にある「固定とモバイルの融合」は、現在モバイル業界が抱える課題をクリアし、ユーザーから見る理想のネットワークを構築していくことで実現すると語り、今後の主流ビジネスになると話して講演を締めくくった。
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