「不安残る」TBSと「大きな前進」の楽天--提携に向けて個別に会見

永井美智子(編集部)、岩本有平(編集部)2005年11月30日 22時30分
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 東京放送(TBS)と楽天は11月30日、楽天が統合案を取り下げて、資本・業務提携に関する協議を開始することで合意したと発表した。この合意を取り持ったのは、両社の主要取引行であるみずほコーポレート銀行だ。今後は楽天のTBSに対する出資比率や業務提携の内容を話し合いによって決めていく。

 覚書の骨子は以下の通り。

  1. TBSと楽天は「放送とインターネットの連携」を実現するために真摯に協議・検討を開始し、そのための「業務提携委員会」を発足させる
  2. 楽天は「共同持株会社設立による経営統合」の提案を取り下げる
  3. 協議期間中、楽天は保有するTBSの持株比率を10%未満まで下げる。これを超える保有TBS株については、みずほ信託銀行に信託する
  4. 楽天のTBSに対する最終的な出資比率等については両社で協議する
  5. 協議期間は2006年3月31日まで。ただし、延長できるものとする

 調印の席では、みずほコーポレート銀行の取締役頭取である齋藤宏氏が立会人をつとめた。三木谷氏によるとTBSの社外監査役であり、楽天の相談役なども務める三井住友銀行の西川善文元頭取も両社の提携に協力したという。

 今回の合意を受けて、TBSと楽天の両社はそれぞれ個別に記者会見を開催した。

「信頼を損なうことなく協議したい」と語ったTBSの井上氏

 TBS代表取締役社長の井上弘氏は、「覚書に調印する際、50日ぶりに楽天の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏と会った」と前置きをし、「これから先は信頼関係を崩すことなく頑張りましょう」と協調姿勢を示した。

 また、楽天が統合案を取り下げたため、TBSは本日予定していた統合案への回答を中止し、両者は事業提携に向けた話し合いを進めることになった。具体的には、取締役を中心とした「業務提携委員会」を発足させる。TBSは専務取締役の木所健一郎氏、財津敬三氏がリーダーとなり、楽天では三木谷氏がリーダーとなる。

なお、提携するのは以下の4事業の予定。

  1. オンライン放送事業
  2. Eコマース事業
  3. ポータル事業
  4. その他事業

 株式については楽天がみずほ信託銀行に「有価証券管理信託」という方式の株式信託をする。有価証券管理信託議決権はみずほ信託銀行に移るが、株式の配当金は楽天が得ることができるため、三木谷氏は「株式購入の利息より大きくなると思う」と語った。

TBSの株式保有率や出資比率については「協議するとしか答えられない」と語った楽天の三木谷氏

 覚書では楽天が保有するTBS株を10%以下にするとなっているが、その割合については両社とも「これから協議するという以上は何も申し上げられない」と語るにとどまった。また、楽天のTBSへの出資比率などについても同様だった。

 協議の期間は、2006年3月末までの予定となっている。これについて井上氏は、「本当は6カ月ほど欲しかった」と語った。この半面、三木谷氏は「早いに越したことはないが、今回の話はロングタームなものだ」とした。ただし、両社共に信頼関係にある限り協議を続ける姿勢を見せた。

 ただし、2006年3月以降に楽天が信託した株式を引き戻して、議決権を行使するかということについては、楽天副社長執行役員の國重惇史氏が「それ(議決権の行使)も含めて検討する」と述べ、協議が失敗に終わった場合の対応について明言しなかった。また、楽天が株式を完全に放棄しないことについて、井上氏は「一定の不安は残る」と述べた。井上氏が「紳士協定に基づいたもの」と語る覚書には、楽天が持つTBSの株式比率を10%未満にするとこが盛り込まれているものの、TBSの株式を買い増すことを禁じるような文言はないからだ。

 TBSでは、アマゾンジャパンやカルチュア・コンビニエンス・クラブなど、複数企業とそれぞれ得意分野での協力を進めている。井上氏は相手を1社に限定しない提携を進めることを強調したが、楽天が他の提携企業と同様の「単なる提携企業の1社になるのか」という記者の質問に対して「大株主なので、(単なる提携企業以上に)気にはなる。だが我々は等距離でビジネスをやる」と語った。楽天の会見でも三木谷氏はこの件について「企業価値向上のために複数企業と提携するのは、株主という立場から言ってもいいことだと思う」と述べた。

 野球協約については、井上氏が「野球協約にのっとっていく」と語ったのに対し、三木谷氏は「野球協約自体に問題がある。球団が理由で親会社の事業戦略に問題が出ること自体が不合理。形式論でなく、実質論で考えるべき」と意見を述べた。

 今回の一連の騒動を通して、井上氏は「一般論として日本の企業は安定経営が重要だと考えられていたが、企業価値の向上に対してより貪欲であるべきだった。この点について反省している」と語った。また、以前に「不退転の覚悟」「一文無しになっても(統合を)やる」と述べていた三木谷氏は、統合案を引き下げたことについて「物事は実現しないと意味がない、まずは話し合いをしないと始まらない」と心境の変化について語り、両社が提携に向けて話しを進めることに「大きな前進」とした。

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