東証1部の1日あたりの売買高が11月8日に史上最高の45億株に膨らんだ。平均株価は1万4000円台を一気に上回り、年内にも1万5000円乗せをうかがう勢いだ。個別銘柄のなかにも15年以上も前のバブル期につけた史上最高値を更新する銘柄も目立ち始めている。こうした久々の株式市場活況のなかで、“最後の出遅れ超大物”としてこれまで物色のカヤの外に置かれていた銘柄に、ようやく株価反転上昇の兆しが見え始めている。その銘柄とはNTTだ。
NTTは、11月9日に2005年3月期の9月中間期連結決算を発表した。この9月中間決算の発表と同時に明らかにされた再々編計画(NTTサイドではNTTグループ中期経営戦略として“再々編”とは認めていない)が好感されて、翌10日のNTTの株価は久しぶりに急騰(一時、前日比3万円高の59万4000円まで上昇)して、9月26日につけた年初来高値59万3000円を更新してきた。
9月中間期決算と同時に、今2006年3月期の業績予想を上方修正した。固定電話契約の減少傾向が響いて減収減益基調に変わりはないものの、同契約の純減数が予想を下回っているほか、携帯電話事業の復調もあって、今3月期の連結営業利益は従来予想の1兆500億円から1100億円増額の1兆1600億円(前期比4%減)へ、同純利益も5250億円(従来予想4400億円)へとそれぞれ上方修正した。また、積極的な自社株買いの実施によって1株利益が増加していることを評価する動きもあるようだ。
しかし、株価が急激な上昇を見せるに至ったのは、NTTがこれまで政府方針によって1990年代後半以降一貫して続けてきた競争力削減のための“分割”の流れを180度転換して、“独占復活”を意味する“再々編”に向けて一歩踏み出したためだ。
この事実上の独占復活との見方もできる再々編は約1年前から、監督官庁との間で交渉が進められていたという。今回の再々編の象徴的な動きとされるのが、2010年までに5兆円を投じ、3000万回線を光回線化・IP化する中期経営計画を明らかにした点だ。
今回の中期計画で明らかになったのは、(1)IP化した次世代ネットワークをNTT東西に集約する(2)「フレッツ」、「OCN」など傘下に複数あるISP(インターネット接続サービス)を長距離、国際電話会社のNTTコミュニケーションズの下に集約する(3)東西地域会社とNTTドコモが協力し、光ファイバー網を活用したIPベースの次世代ネットワークを2006年度下期から構築する――の3点が大枠となっている。
外国証券のストラテジストは「この政策転換に対してはKDDI、東京電力、ソフトバンクなどの後発通信事業会社や、その関連企業からの反発は当然予想されるところだが、これに対して総務省は“見返り”として、ソフトバンクなどの携帯電話事業参入希望の3社に対して12年ぶりに新規参入を認めて、NTTドコモなど既存の携帯電話各社とのサービス競争を加速する方針も打ち出し、反発を穏健な程度に抑えようとしているとの見方もある」としている。
NTTの和田紀夫社長は9月中間決算発表の席上で「NTT法で許されるぎりぎりのところでやっていく」とまで発言し、グループ各社に分散したサービスを順次統合する方針を明らかにした。そして、和田社長は「グループ内で張り合うのをやめ、お互いのアドバンテージを生かすのは当然の流れ。NTT法には“ISPを統合してはならない”とは書いていない」とまで発言し、今回の再編はNTT法の範囲内であり、「NTTの再統合ではない」と、何度も繰り返した。
NTTは1987年2月9日に“真冬の熱狂”といわれるほどの異常人気のなかで上場し、119万7000円の公開価格が、わずか2カ月の同4月にはなんと3倍近い318万円の上場来高値をつけた。しかし、その後は一貫してほとんど良いところなしに株価が下落調整を続けた。そして、2002年9月26日には、なんと37万5000円の上場来安値まで下落した。市場関係者の一部からは「今回の再々編による“独占復活”を評価した買いは継続する可能性もあり、中期的には2000年11月以来の100万円回復も夢ではない」と、かなり楽観的な声も聞かれるほどだ。
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