アイピーモバイルは11月10日、総務省から携帯電話事業への新規参入を認められたことを受けて、今後の事業計画を発表した。データ通信に特化し、2009年度の単年黒字化を目指す。
TD-CDMAと呼ばれる技術を使い、下り最大5.2Mbps、上り最大858kbpsの通信サービスを2006年10月1日から提供する。時速120kmの高速移動中でも通信可能で、静止時の実測通信速度は2.2Mbps程度という。
まずPCカード型の端末を使ったサービスから始め、順次据え置き型モデム端末や、「パーソナルゲートウェイ」と呼ぶ持ち運び可能なモデム端末も提供する。また、自動販売機などに向けた組み込み型端末も用意し、機器間(MtoM)の通信サービスも提供する。
サービスの提供は、関東や東海、近畿地域からとなる。2008年3月末までに東名阪で3000局の基地局を設置し、同地域における人口カバー率を50%以上とする。2008年度以降には提供地域を全国に広げ、2013年3月末までには8500局を設置する。設備投資費用は約1500億円となる見込みだ。
アイピーモバイル代表取締役の杉村五男氏
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サービスの提供価格は通信速度や利用形態によって異なるが、「月額2500〜5000円の定額制にする」とアイピーモバイル代表取締役の杉村五男氏は話す。MtoMのサービスに関しては、スピードを低速にすることで数百円程度の定額制で提供するという。
スピードの速さと低料金を武器に市場を開拓する考えで、2010年3月末時点で450万件の加入者を獲得し、単年黒字化を目指す。このうちの半分はMtoMサービスの利用者となる予定だ。2012年3月末には1160万件の契約者獲得を目標にしており、このうち約700万件がMtoMサービスになるものと見ている。
アイピーモバイルはマルチメディア総合研究所がTD-CDMA事業を展開するために設立した企業だ。これまでNTTコミュニケーションズと共同で実験を進めてきた。9月には8億7500万円の増資計画を発表しており、同社取締役の竹内一斉氏によれば、これまでに4億2500億円の増資が完了しているという。引受先はアイアイジェイテクノロジー、CSK プリンシパルズ、翔泳社、楽天ストラテジックパートナーズの4社だ。なお、今後の増資計画や引受先については「相手と機密契約を結んで話を進めているため明らかにはできない」(杉村氏)としている。
サービスの販売は、パートナー企業が回線を借りてユーザーに提供するMVNOの形態が中心となる。特にサービス加入者の過半数を占める予定のMtoMサービスは、システムインテグレーターなどがMVNOとなり、サービスを提供する。具体的には自動販売機の販売状況の管理や、タクシーの運行管理などを想定しているという。
音声通話サービスについては、「技術的には可能だが、市場ではすでに多くの企業が音声サービスを提供しており、競争環境を考えると互角に戦えるとは思えない」(杉村氏)と参入の意思がないことを示した。PCカードなどの機器や基地局のメーカーについては「現在選定中」(杉村氏)と述べるにとどめている。
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