顔認識や虹彩認識といったバイオメトリクス(生体認証)技術にまつわる大げさな報道の影響で、いくつかの国々が、同技術の必要性が最も高いと思われる分野、すなわち国境防衛に同技術の導入を積極的に進めている。
バイオメトリクスは、進化を続ける身元確認/認証システムの次世代技術として、広く宣伝されてきた。しかし、確かにバイオメトリクス技術は政治家や一般市民から熱烈な歓迎を受けたが、システムの相互運用性、プライバシー、データ共有に関する問題が解決されなければ、同技術はそれらの称賛に応えることはできない、と業界の一部の専門家は指摘する。
バイオメトリクスを推進する非営利組織、International Biometric Foundation(IBF)のJulian Ashbourn会長によると、現在、世界各国が協力してバイオメトリクスの国際標準の確立に取り組んでいるが、依然として互換性やプライバシーの問題がその取り組みの障害になっているという。バイオメトリクスには未解決の問題が数多く残っていると同氏は指摘し、「私の個人データはどこに保存されているのか。そのデータを誰が共有しているのか。データはどのような方法でバックアップされ、保存されているのか。使われなくなった場合は消去されるのか」と疑問を投げかける。
同技術の信頼性も懸念の原因を生み出している。指紋/虹彩認識技術はエラーの発生率が非常に高く、また顔認識技術は、明暗、位置、表情に左右されるため、バイオメトリクス技術の導入により、かえって国境通過の効率が低下するのではないかとの懸念が噴出している。
現在、国境防衛の手段としてのバイオメトリクス技術に関心が集まっているが、この動きを助長した一連の出来事の発端は2002年にさかのぼる。当時、米国では2005年10月以降、ビザのない訪問者にバイオメトリックパスポートの所持を義務付ける法律が成立した。
しかし、その後バイオメトリックパスポートおよび関連の国境警備手段の開発競争が発生し、EU加盟国の大半は米国の入国システムの施行期限に間に合わせようと四苦八苦する羽目になった。しかし、米国の当局は結局、態度を軟化させ、EU諸国に対し1年間の猶予期間を与えた。
今のところ、米国が設定した当初の期限に間に合ったのはベルギーだけだ。同国は、2004年11月に新技術に基づくパスポートを導入した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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