業績を大幅に上方修正した東芝の明暗

 主力ハイテク銘柄の9月中間決算発表の本格化を控えた先週末の10月21日、東芝が2006年3月期の9月中間期の連結業績(米国会計基準)について上方修正を発表した。業績の上方修正が21日の昼休み中に発表されたことから、当日後場に東芝の株価が一時、前日比29円高の540円まで買い進まれるなど大幅高となった。

 この東芝の上方修正は、単に個別銘柄の範囲に止まらず、前場前日比マイナス水準にあった日経平均株価を後場にプラスゾーンへと導く原動力となった。NECなどの業績が伸び悩みを見せるなかで、なぜ、東芝が大幅な業績上方修正となったのかその背景を探った。

 10月21日に東芝が発表した9月中間期の連結業績予想は、売上高2兆9001億円(従来予想2兆8800億円)、営業利益514億円(同200億円)、税引き前利益412億円(同100億円)、最終損益146億円(同収支均衡)と大幅な上方修正を発表した。

 上方修正の理由について同社では「半導体事業などの電子デバイス部門、電力・社会システム事業、医用システム事業などの社会インフラ部門が当初見込みに比べて好調に推移したため」としている。今回は、2006年3月期通期の業績見通しは明らかにしていないものの、今期通期業績予想も当然大幅に上方修正される可能性は濃厚といえそうだ。

 半導体事業で具体的に伸びをけん引したのは、携帯音楽プレーヤーの売れ行き好調を背景にフラッシュメモリ(電気的に一括消去再書き込みが可能な半導体メモリ)の需要が非常に好調に推移したことが寄与した。さらに、医療用システムや電力・社会システムなどの社会インフラ関連の採算が好転したことも上方修正の支援材料となった。

 こうしたフラッシュメモリの好調を背景に、東芝は2005年度の半導体製造向けの設備投資額を従来予想比で33%増の2250億円程度に引き上げる見通しだ。これにより、フラッシュメモリでシェアトップの韓国サムスン電子を追撃する構えだ。

 しかし、東芝の業績向上にとっての懸念材料もある。米国Lexar Media,Inc.とのフラッシュメモリ特許訴訟に関して、10月15日(現地時間14日)に、米国カリフォルニア州サンノゼのカリフォルニア州第一審裁判所から、東芝および東芝アメリカ電子部品は陪審評決に従いLexarに対して4億6500万ドルの支払いを命じた。この評決に対して東芝では、「フラッシュメモリは独自に開発したもので、陪審評決は不当、陪審評決の見直しを求める申し立てをする」としている。

 さらに、米有力民間調査会社のフォレスター・リサーチが、次世代DVD(デジタル多用途ディスク)の規格競争で、ソニーなどが提唱する“ブルーレイ・ディスク(BD)”方式が、東芝などが提唱する“HD DVD”方式に勝利するとの調査結果を公表している。BD方式が米国の映画界やIT(情報技術)、家電業界などからも多くの支持を得ていることを挙げている。

 東芝の株価は、9月中旬から上昇トレンドに乗り始め、それまでの400円台前半での小幅なボックス相場を脱して、10月4日には一時538円まで上昇、そして今回の上方修正を好感して先週末の10月21日には一時540円まで買い進まれ、年初来高値を更新している。信用の買い残高が2075万株(売り残高532万株)と膨らんでいることはマイナス材料としてやや気になるものの、業績好調が維持されればジリ高で強含みの推移となることも予想される。

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