バルチック海沿岸の小国エストニアで先週実施された地方議会選挙で、恐らく世界初となる、全国規模でのインターネット投票が導入された。しかし、実際にインターネット経由で投票された票数は全体のわずか1%にすぎなかった。
エストニアは、総人口がおよそ140万人で、国土面積は米国のニューハンプシャー州とバーモント州を合わせたほどの広さだ。同国の選挙管理委員会に当たるEstonian National Electoral Committeeのウェブサイトによると、今回の地方議会選挙における総投票数はおよそ50万票だという。同サイトに掲載された町レベルの投票集計の概算によると、今回インターネット経由で投票された総投票数はおよそ6000票だった。
選挙管理委員らがAssociated Pressに語ったところによると、システムの故障やハッキング未遂事件などの報告もなく、選挙は成功したと考えているという。同委員会は今年1月、オンライン投票システムのテストとして、およそ800人のタリン市民を対象に、世論調査に対する回答を同システム経由で行なう試みを実施した。
このオンラインシステムを利用するには、電子IDカードが必要だ。エストニアでは2002年以来、15歳以上の全国民に電子IDカードの携帯を義務付けている。このカードは通常、事務処理に必要な書類や各種取引に身分証明が必要とされる銀行や役所などで、国民が身分を証明する手段として使用することを意図して作られている。
オンラインで投票するには、まず所有するコンピュータに接続されているリーダーにIDカードを差し込み、投票用ウェブサイトにログオンする。認証されたら、暗号化システムを通じて投票し、さらにデジタル署名を行なって投票内容を確認してから送信する。
「この国は、電子政府全般の促進に官民が一体となって投資を行ってきたようだ。(オンライン投票システムは)エストニアの取り組みのほんの一部にすぎない。またエストニアは明らかに、この方針を推し進める決断を下したようだ。」と語るのは、ユタ大学教授で、インターネット投票に関する書籍の共著者であるThad Hallだ。「同国がこの種の活動を今後も続けていく可能性は非常に高いだろう。」
インターネット投票は、過去にフランス、英国、米国でも試験的に実施されたが、実際の選挙で、しかも全国規模で実施したのはエストニアが初めてだろう、とHall教授は語る。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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