Wikipediaがプロの物書きを超える?--米エスクワイア誌の挑戦 - (page 2)

Daniel Terdiman(CNET News.com)2005年09月30日 11時18分

 Jacobsの記事には、「このところディドロの『百科全所』を見ていないという人は、これがどうしようもなく未完成な事典であることを覚えておいたほうがよい)」という書き出しで始まる。ミスタイプや誤りの含まれた文章は以下のように続く。「ディドロの百科全書には、例えばクジラ爆発の項目はない。トロールメタル(キリスト教徒を食べるゴブリンを歌ったロックミュージック)も一人尺八(エジプトの神話時代にまで遡る自慰行為の一種)も、ドクター・ボンベイ(「奥様は魔女」に出てくる魔法使いの医者)も掲載されていない」(Jacobs)

 「これらの用語は、唯一Wikipediaにしか収容されていない。Wikipediaは2001年に立ち上げられた百科事典プロジェクトで、今では史上最も大規模かつ広範で、自由奔放な参考資料となった」(Jacobs)

 JacobsがWikipediaにこの記事を投稿してから、最初の24時間で224回、次の24時間で149回の編集が行われたという。

 記事の最終版は、米国時間9月23日にそれ以上の編集ができないようロックがかけられ、多数のユーザーの努力の結晶とも言うべきものになった。

 「小人投げには、法的にどのような妥当性があるのだろう」--最終版はこんなふうに始まり、「人々はキリストの包皮を本当に聖なる異物として崇めているのか? 象に踏みつぶさせるという刑罰を実施している地域はどこだろう? サイエントロジー教の中核に存在する、神秘的な宇宙支配者Xenuとはいったいだれなのか?」と続いていく。

 「答えは『ブリタニカ大百科事典』にも載っていない。これらすべてを説明してくれるのは、Wikipediaだけだ。この無料のオンライン百科事典は、史上最も大規模で広範な、だれもが編纂できる参考資料となった」(同記事最終版より)

 記事の編集に際して、WikipediaコミュニティはJacobsが示したガイドラインに従った。Jacobsいわく、「Esquireに掲載するのにふさわしいよう、パンチの効いた文体で執筆してほしい。雑誌の特集記事なので、いかにも百科事典という雰囲気の原稿は好ましくない。Wikipediaと異なり紙媒体として出版する記事であることを意識して、単語数は元原稿に近いものにしてもらいたい」

 ユーザーはこれをきちんと遵守した。Wikipediaサイトによれば、14段落709語という分量のあったJacobsの原稿は、編集後にはオリジナルよりはるかにウィットに富んでおり、段落数および単語数も15段落771語と、完璧に仕上がっていたという。

 自身のブログ「Waxy.org: Links」でEsquireの実験を紹介したAndy Baioは、このプロジェクトが、“ウィキペディアン”たちの記事編集手法の好例を提供してくれると述べている。

 「実にすばらしい実験だ。Wikipediaコミュニティの奮闘には目を見張ってしまう。すべての事実誤認が瞬く間に正され、その後は、文章を洗練し明晰にして、読みやすい記事に編集することに重点が移っていった」(Baio)

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