イー・アクセスの子会社で、携帯電話事業を手がけるための準備企画会社であるイー・モバイルは8月31日、東京放送(TBS)を引受先とした100億円の第三者割当増資を行うと発表した。両社は放送と通信を融合した新しいサービスを共同で検討する。
TBSの払込期日は9月30日。発行株式数や発行価額については調整中としている。イー・アクセスによると、放送事業者が通信事業者に本格的な資本出資をするのは日本初という。なお、TBSは同日、電通やビッグカメラなどを引受先とする総額約206億円の第三者割当増資を発表している(関連記事)。
和やかに握手を交わすイー・アクセスとTBSの代表者たち
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イー・モバイルに出資する狙いについて、TBS取締役の城所賢一郎氏は「携帯電話はパーソナル携帯情報端末として最も将来有望なメディアだ。既存のキャリアと組むだけでなく、イー・モバイルという新しいキャリアにサービス開始当初から関わることで、面白いことが一緒にできる余地が大きいと考えた」と説明した。
両社は共同で「モバイルブロードバンド・コンテンツ戦略推進委員会(仮称)」を設立し、新サービスを検討する。具体的には携帯電話向けのデジタル放送(1セグメント放送)への対応や、モバイルブロードバンドに対応したコンテンツやサービス、番組連動型サービスなどを考えていくという。
イー・モバイルは9月末にも、1.7GHz帯を利用した携帯電話事業の免許を総務省に申請する方針だ。免許が取得できた場合、2006年度中にまずデータ通信サービスを一部の地域で開始する。2008年頃にはエリアを全国に拡大するとともに音声サービスも始める。
TBSはイー・モバイルのインフラが整備される2008年をめどに、放送コンテンツをイー・モバイルのインフラ上で展開したい考えだ。
イー・アクセス代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏によると、イー・アクセスでは創業当時の2000年5月にもTBSに出資を要請していたという。「そのときは放送事業者が通信事業者に出資するというのは時期尚早であるとして見送られた。当時我々に投資していればイー・アクセスの株式上場で大もうけできたのに」(千本氏)と苦笑しながらも、「携帯電話のブロードバンド化は世界的な流れであり、ADSLよりもはるかに大きな市場がある。そこで、『そろそろ一緒にやらないか』とイー・アクセスからTBSに声をかけた」と明かした。
TBSでは「100億円という巨額な金額であり、半年以上検討を重ねた」(城所氏)という。モバイルコンテンツ事業の強化だけでなく、イー・モバイルの株式上場などによる金銭的なリターンも期待しているといい、「かつての東京エレクトロンへの出資と同じようになることを願っている」とした。
イー・モバイルでは全国のインフラ整備に必要な投資額を3000億円程度と見積もっており、今後も第三者割当増資を行う計画だ。TBSへの増資によってイー・モバイルの資本金は403億5000万円となるが、「免許が交付されると予想される2005年末までにはイー・モバイルの資本金を1000億円にまで増やしたい」(千本氏)としている。割当先については「個人向けに魅力的なコンテンツを持つ企業や、コンテンツへのアクセス権を持つ投資家などと話をしている」(同氏)と述べるにとどめた。
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