PayPal共同創業者のMax Levchinが徹夜で仕事をするようになったのは、ずいぶん前のことだ。
だが、最近のLevchinは、「Slide」という自分の新しいインターネットビジネスを立ち上げるために、夜遅くまで働く自分に気付いた。同氏は、2002年にPayPalをeBayに15億ドルで売却して以来初めて立ち上げる大型ネットベンチャーとして、昨年このSlideを創業した。
Slideは、ソーシャルネットワーキング、写真共有、ウェブシンジケーション、eコマースなどの要素を取り入れたサービスを無償で提供する。CNET News.comが入手した情報によると、同社は米国時間29日に一般向けにサービスを公開するという。Slideの提供するサービスの中核となるのは、ユーザーのハードディスク内にある写真をインデックス化し、PCの画面の一部でスライドショー表示できるデスクトップ用プログラムだ。ユーザーはこれをダウンロードして利用する。
同サービスのメンバーは、家族や友人、他のSlideメンバーを招待して自分の写真を見せたり、自分の写真を保存することができる。また、招待された人は「友人」としてメンバーのネットワークに参加できる。さらに、他のメンバーの画像を自分のスライドショーに入れておくと、どちらかが新しいアルバムを作成した場合に、相手にそれを知らせる機能もある。同社では一連のアクセス用ツールを用意して、ユーザーが望む相手に自分の写真を公開したり、他のメンバーの写真を登録できるようにしている。
Slideは、デジタル写真、パーソナルパブリッシング、ウェブシンジケーションなど、現在大きな注目を集める複数のトレンドを踏まえてつくられている。だが、この市場には数多くの競合企業が存在している。たとえば、YahooやNews Corp.のMySpaceをはじめ、数多くの企業がブログやソーシャルネットワーキング、写真共有を組み合わせたサービスを開発している。Yahoo傘下のFlikrでは、RSS(Really Simple Syndication)を使って、ユーザーが写真のフィードに登録できるようになっている。また、8月中旬にサービスを開始したばかりのImeemでは、これらの組み合わせにIM機能を加えたサービスを提供している。
「消費者は、写真をプリントアウトしてアルバムに貼り付けること以外にも、デジタルコンテンツを使ってできることがたくさんあることを理解し始めている」とJupiterResearchのアナリスト、Michael Gartenbergは言う。「情報を編集したり、オンラインコンテンツをトリミングして、それらを共有するためのツールが登場しており、簡単に自分のコンテンツを公開することが可能になっている」(Gartenberg)
今年30歳になるLevchinは、Slideに100万ドルの自己資金を注ぎ込んでいる。同氏はすでに、Slideを他から際立たせるための正しいやり方を見つけているかも知れない。Slideが提供する情報公開/登録用ツール類は他のサービスよりも使いやすいと同氏は主張する。他のサービスでは、RSSについての知識があり、それに関する技術的なノウハウがいくらか必要となるが、同氏の母親を含む一般人には、もっとシンプルなツール類が必要だと同氏は述べており、Jupiterの Gartenbergもこの考えに同意している。
「この種のサービスを次の段階に引き上げるカギは、RSSや他の技術的なコンセプトがどんなものかを知らなくても、それを使えるようにすることだ」とGartenbergは言う。「自分の写真に登録させるために、自分の祖父を招待すると、あとは祖父が何度かボタンをクリックするだけでいいようなところまでいきたいと思うだろう」(Gartenberg)
Levchinによると、Slideの「再生(スライドショー)」機能も他には見られないものだという。このデスクトップツールバーは、フィルムのロールに似た形をしており、1つひとつのフレームのなかにそれぞれ別の写真が表示される。また、このツールは常時スクロールしながら大量の画像を表示するので、おそらく滅多に目にすることのない写真を見ることも可能だ。そして、特定の写真にマウスを持っていくと、スライドショーが一時停止し、画像が拡大される。このプログラムには、そうして選んだ画像を電子メールに添付して送信するオプションも付いている。
同社の計画によると、Slideでは今後、写真に動画やテキスト、ニュースの見出しを取り込み、マルチメディアチャネルをつくることも可能になるという。
いまのところ、Slideが動作するのはWindowsマシンだけで、Mac版については現在開発中だという。
Slideのビジネスモデルも他サービスとの差別化に役立つはずだ。競合他社の多くは、広告収入を主な収入源としているが、Slideではオンラインショッピングの仲介サービスから得る手数料を収入源にしようと考えている。同社はすでにオンラインで靴を販売する「Zappos.com」やデザイナーブランドのオンラインアウトレット「Bluefly」と契約を交わしている。これらのオンラインストアは、自社の商品を写したフォトギャラリーをSlideサイトに設け、それらの写真から自社サイトの商品ページへとリンクさせることになっている。Slideのメンバーはこれらの写真に登録することができる。そしてメンバーが買い物をすると、Slideが代金の一部を受けとる仕組みになっている。
ZapposがSlideと最初に提携契約を結んだのも偶然の出来事ではない。Levchinは自分のガールフレンドがオンラインで靴を探しているのを見ていて、Slideのアイデアを思いついた。このガールフレンドはZapposのサイトで非常に多くの時間を費やしていたため、Levchinは彼女のかわりに同サイトをブラウズするプログラムを書こうと考えた。
「オンラインで靴を探す時間を減らし、その分多くの時間を自分のためにとっておいて欲しいと考えたのがそもそものきっかけだ」(Levchin)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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