関税は対中政策の秘策なのか - (page 2)

Ed Frauenheim(CNET News.com)2005年07月06日 10時00分

--中国のテクノロジー産業と労働者は、どのような影響を受けることになるのでしょうか。

 この措置の目的は中国製品の価格競争力を弱めることです。中国製品の価格競争力は、過小評価された為替レートによって、人為的に高められています。通貨を過小評価するということは、輸出助成金を手に入れるようなものです。そうすることで、中国は人為的に自国の産業と労働者の競争力を高めているのです。

--米国の労働者団体は、人民元は過小評価されており、中国との競争条件を公平なものにするためには、関税率を大幅に引き上げる必要があると主張しています。しかし、大幅な関税引き上げは貿易戦争を誘発し、米中両方に損害をもたらすという指摘もあります。貿易戦争の懸念についてはどう思われますか。

 その点は私も危惧しています。だからこそ、これを最後の手段と考えているのです。もっとも、私が懸念しているのはあなたとはほぼ逆のことです。私は中国が為替調整を行わなかった場合にこそ、貿易戦争が起きると考えています。

--そうでしょうか。

 ええ。その兆しはすでに現れています。輸出障壁の対象となる中国製品は、毎週のように増えています。

 確かに、貿易戦争を回避するために輸入課徴金を提案するのは逆説的ですが、私はこのような措置が必要だと考えています。中国が人民元を引き上げなかったら、米国が輸入障壁を高め--これがまさに今の状況ですが--中国がそれに報復するという悪循環が生じることは間違いないからです。

--テクノロジー業界に特化した質問をさせてください。中国は後に輸出するという前提で、電子部品を免税で輸入することを許可しています。この政策を利用して、中国は米国製のコンピュータチップを輸入し、それを加工して、コンピュータなどの完成品として、米国に再輸出しています。米国が関税や輸入課徴金を課せば、中国は輸入税を導入するという形で、米国に報復するのではありませんか。そうなった場合、テクノロジー製品を製造している米国企業や、そうした製品を購入する米国の消費者が打撃を受けるかもしれません。

 その通りです。それが貿易戦争のリスクです。しかし、先ほども申し上げた通り、人民元の過小評価が続くなら、米国はこれまでもそうしてきた通り、輸入障壁を高めることになります。そうなれば遅かれ早かれ、中国も米国に報復措置を取ることになるでしょう。マイナス面はどちらにもあり、どちらを選ぶかの問題なのです。

--テクノロジー製品の製造プロセスは非常に複雑化しています。たとえば、ほとんどのマイクロプロセッサは基本的には米国製品であり、仕上げのわずかな行程を、中国で行っているにすぎません。このような製品も、あなたが提案している関税あるいは課徴金の対象となるのですか。

 通商政策では、きめこまかい対応というのはなかなかできません。米国に輸入される製品は、その価値のどれくらいが海外で付加されたものかを問わず、基本的に100%が課税対象となっています。私のようなエコノミストは、関税は輸出国で付加された価値に対して適用されるべきで、少なくとも米国、あるいは第三国から輸入された部品のコストに適用されるべきではないと考えていますが、通常はそのようには機能しません。その製品の成り立ちを詳細に分析する方法--たとえば、その製品の価値のどのくらいが中国で付加されたものかを客観的に割り出す方法がないからです。そのため、関税は全体に適用されることになり、ご指摘の通り、米国から中国に輸出され、米国に再輸入された製品にも関税がかかるというおかしな状況が生まれています。

--それも考えられるマイナス面のひとつですね。

 その通りです。だからこそ、自由貿易を実現する必要があるのです。このような歪みは解消するべきです。しかし、現実には政策をケースバイケースで運用することは難しいので、こうした「異常」が生じることになります。

--あなたの提案は、同じIIEのCatherine Mannのアドバイスとは矛盾しているようです。Mannはソフトウェアとテクノロジーサービスの自由貿易を推進すれば、ITのスキルを持ち、ITに習熟した労働者に対する国内の需要は増大すると主張しています。

 矛盾はしていません。私はMannの意見に全面的に賛成です。問題は、その前に取り組むべき短期的な--願わくは、短期的な問題があるということです。それが通貨の不均衡です。IIEでは、Mannや私だけでなく、すべての研究員が一丸となって、自由貿易を推進しています。しかし、深刻な貨幣の不均衡が存在している限り、その道のりは大きく歪められ、脱線させられることになるでしょう。

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