エコノミストのFred Bergstenは自由貿易論者を自認しているが、こと中国に関する限り、関税障壁の必要性を感じているようだ。
これは矛盾した主張のように思える。しかし、Bergstenは公平な競争環境を整備し、市場が全面的な貿易戦争--つまり各国が相互に関税を掛け合うような状況に陥る可能性を回避するためには、中国製品に50%の関税をかける必要があるかもしれないと考えている。Bergstenは国際経済研究所(IIE:Institute for International Economics)の所長で、米財務省のOBでもある。
Bergstenは、こうした関税が中国の報復措置を招き、米国のテクノロジー製造業を脅かす可能性があることも認める。しかし、人民元の過小評価はすでに米国の製造業を苦しめており、米国内ではさまざまな貿易保護措置を求める声が高まっていると主張する。
Bergstenの強硬な姿勢は、対中貿易摩擦をめぐる一連の議論の一画をなすものだ。そして、驚くべきことに、米労働総同盟産業別組合会議(AFL-CIO)も、Bergstenと同様の姿勢を打ち出している。同団体は中国製品に27.5%の関税を課すことを求める法案を支持している。AFL-CIOが根拠とする研究によれば、対中貿易赤字の拡大によって、米国では1989年から2003年の間に150万人分の雇用が失われたという。このなかには、半導体製造分野における4万6200人分以上の雇用も含まれている。
しかし、テクノロジー業界の指導者の間からは、大幅な関税引き上げではなく、もっと穏便な措置を求める声も上がっている。
この議論は国際的なアウトソーシングが普及し、中国やインドなどの国々がテクノロジー関連のサービスや製造で大きな役割を果たすようになった時代に、米国が技術面での優位性を維持するためにはどうすべきか、という広範な議論の一部でもある。
CNET News.comは先日、Bergstenにインタビューを行い、関税に関する同氏の提案と、米国のテクノロジー産業の見通しについて話を聞いた。
--先日、あなたが中国からの輸入品にはもれなく最大50%の輸入課徴金を課すべきだと述べた、という記事を読みました。この発言は文言通りに受け取ってよいのでしょうか。
だいぶ説明が必要だと思います。そもそも、輸入課徴金の導入は私の最終的な目標ではありません。私とIIEの研究員は2年にわたる議論の結果、中国は人民元を約25%切り上げる必要があると結論しました。最近は米国政府も圧力を強めていますが、中国政府は依然として人民元を切り上げていません。このことが貿易の不均衡、米国の経常赤字、そしてドルと世界経済が「ハードランディング」に向かうリスクを大幅に拡大しています。こうしたことから、私は中国に対する圧力を強め、為替レートの調整をより強力に促すことが必要だと考えています。
--具体的には、どのような措置が考えられますか。
まずは、国際通貨基金(IMF)に働きかけることです。IMFは通貨操作を厳しく禁じています。それがうまくいかない場合は、世界貿易機関(WTO)に中国がいくつかの義務を果たしていないと訴えるのがよいでしょう。中国は為替レートの調整に応じなければならなくなり、そうしなかった場合は、貿易制裁を受けることになります。
どの方法もうまくいかなかったときは、怒りではなく、遺憾の意を表明し、国内に輸入されるすべての中国製品に輸入課徴金を課すことを、中国政府に通告しなければなりません。それでも中国が行動を起こさないときは、その通告を実行に移すことになります。
--50%の根拠を教えてください。
なぜ、50%という数字を出したかということですね。人民元の切り上げ率は25%が妥当だと考えています。輸入課徴金は貿易収支の片方(輸入側)にしか適用されませんから、それを2倍の50%にする必要があるのです。しかし、私は中国に輸入課徴金を課すことがよい、あるいは今すぐにそうするべきだといっているわけではありません。それは最後の手段であり、中国やその他のアジア諸国の為替レートを調整するためには、それ以前に積極的に進めなければならないことがたくさんあります。
--あなたの提案が実現した場合、米国のテクノロジー経済、特にハイテク産業とハイテク労働者はどのような影響を受けるのでしょうか。
詳細な分析はまだ行っていませんが、この提案のそもそもの目的は、中国製品に対する米国の競争力を高めることです。輸入障壁が高まれば、中国から輸入される製品の価格は上がり、その結果、米国製品の競争力が高まることになります。
忘れてはならないのは、中国が為替レートを調整すれば、人民元だけでなく、すべてのアジア諸国の通貨の価値が上がるということです。アジア諸国は中国が通貨の価値を抑えているという理由で、自国の通貨の価値を抑えています。中国がわれわれの提案する25%の為替切り上げに応じれば、他のアジア諸国もそれにならうでしょう。切り上げ率は少なくとも中国の半分程度、なかには中国と同じ25%の切り上げを行う国もあるかもしれません。そうなれば、日本からインドまで、あらゆるアジア諸国から米国に輸出される製品の競争関係は一変し、米国の競争力はあらゆるセクターで高まることになるでしょう。ハイテクセクターも例外ではありません。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス