世界で10本の指に入る最速スーパーコンピュータを開発するのはたいへんな作業だが、それによって得られる名誉はさらに長続きしなくなっている。
ドイツのハイデルベルグで開かれた国際スーパーコンピュータ会議(International Supercomputing Conference:以下ISC)で、現地時間22日にスパコン世界最速ランキングの最新版が公表された。それによるとトップ10に入ったシステムの半数は、今回初めてランクインしたものだという。またトップ10のうち、6つのシステムがIBM製で、このうちの5つはBlue Geneの設計を利用したものだった。Blue Geneでは6フィートの高さのキャビネット1台につき1024基のプロセッサを搭載できる。
このスパコン最速ランキングは1年に2回更新されているもので、独マンハイム大学、テネシー大学、米エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所の研究者らが上位500のシステムを選んでいる。同ランキングでは、Linpackというテストでシステムの処理速度を計測する。
スーパーコンピュータは自動車の設計や医薬品の研究開発などに使われる。スーパーマシンの研究が一般のマシンに影響を与えることもよくある。数多くのローエンドマシンで構成されたクラスタ型のマシンが上位にランクインするケースが増えているからだ。
同ランキングに登場するシステムの入れ替わりも激しい。今日もっとも遅い500位のマシンでさえ、最初に同ランキングが発表された1993年6月当時の上位500のシステム全体を合わせた処理能力を上回る。また1998年11月のランキングでは、処理性能が1テラフロップスを超えるシステムは1つしかなかったが、いまでは500位までのすべてのシステムが、1テラフロップスを超える性能を持っている。さらに、今回トップになったIBMのBlue Gene/Lの性能は、2001年11月のランキングに入った全システムの合計処理能力を上回っている。
IBMのBlue Gene/Lは、3月に135.5テラフロップスを記録した後さらに136.8テラフロップスまで記録を伸ばした。IBMでは、同システムの納入先であるローレンス・リバモア国立研究所がBlue Gene/Lの規模を2倍に強化する予定であることから、2005年11月のランキングでも同システムが首位を維持すると予想している。
「われわれは、Blue Gene/Lの性能が270〜280テラフロップスまで伸びると見込んでいる」と、IBMのDave Turek(高性能コンピューティング担当バイスプレジデント)は述べている。
Blue Gene/Lよりも小型のWatson Blue Gene (BGW)というシステムは、91.3テラフロップスで第2位にランクインした。このほか、今回のランキングには、合わせて16のBlue Geneシステムがランクインした。
Blue Geneシステムの価格は1ラックあたり約200万ドルだが、IBMはラックの部分売りもしているとTurekは述べている。同社は現在「Cyclops」(開発コード名)というライフサイエンス分野に向けた別のBlue Geneシステムも設計している。だが、Turekによると「Cyclopsを商用化する計画はない」という。
今回のランキングでは、IBMのシステムが259と全体の半数を上回っている。なお前回のランキングでは216のシステムがランクインしていた。
IBMがリードを広げる一方、Hewlett-Packard(HP)のシステムは前回の173から今回は131へと数を減らしている。しかし、高性能コンピューティング分野全体の売上については、HPの方がIBMを上回っている。
調査会社のIDCによると、2005年第1四半期には、19億ドル規模のこの市場でHPは34%のシェアを占め、IBMの28.2%を上回ったという。また3位以下は、Sun Microsystems(12.3%)、Dell(11.9%)、SGI(2.6%)の順になっている。
チップメーカーのインテルも今回のランキングで大きな節目を迎えた。トップ500の半数を超える254のシステムが同社のXeonプロセッサを搭載したシステムだった。ただし、ハイエンド向けのItaniumプロセッサ搭載システムは前回の84から79へと数を減らしている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向 けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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