日本の低レベルのベンチャーキャピタル投資を憂慮し、日本政府はベンチャー育成施策を躍起になって展開している。そのメニューは充実しており、十分に内容を知ればかなり事業に役立てることができるといえる。
ベンチャーを後押しするメニューは一応、豊富にそろっているのである。あとは利用者の使い方次第であるといえよう。ベンチャー施策を展開している経済産業省の資料に基づき、同省などの施策を紹介してみたい。
最も派手な施策は「DREAM GATE」だろう。格闘家のボブ・サップをメインキャラクターとして起用したこの施策は、「起(た)ち上がれニッポン」という意欲的なサブタイトルを持っている。野心を持つ若者たちに対してさまざまな情報を提供しようという試みだ。財団法人ベンチャーエンタープライズセンターが運営し、経済産業省が後援する。
「日本には挑戦者が足りない」。これが「DREAM GATE」のコピーだ。
経済産業省は、ベンチャー企業によって新商品や新サービスがつぎつぎと生み出される風土やカルチャーが必要だという認識を持っている。この牽引役として、ベンチャー企業などの「新たな挑戦者」を国家戦略的に推進しようというのだ。
「DREAM GATE」には専用サイト(http://www.dreamgate.gr.jp/)があり、公認会計士や弁護士、税理士などに無料でインターネット経由の相談ができるサービスを提供する。起業に関する情報を盛り込んだメールマガジンを週2回配信。「起業家かばん持ちインターン」「起業教習所」などの事業やイベントを行っている。
「DREAM GATE」の予算は2003年度から2005年度までで約31億円。これだけ金をかけただけあって、成果は上々だ。「DREAM GATE」の登録ユーザー数は約30万人。月間サイトページビューは178万3000PV。インターネット相談サービス利用件数は7789件。メディアの露出広告費換算は2004年度で16億9000万円という。
そして「DREAM GATE」のサービスを利用した起業者は2004年度で約1万人に上る。なかなかの成果を挙げているといえそうだ。
「DREAM GATE」はさらに大きな成果を目指している。必達目標として、2006年度末に50万人以上のユーザーを目指す。努力目標として、サービス利用者から2006年度末で総計3万人の起業家を生み出すことを目指している。
経済産業省が中心となり、1円でも企業を作れるいわゆる「1円起業」という制度が話題になった。2003年2月に改正新事業創出促進法が施行され、実現した。
これは、現在商法では株式会社は1000万円、有限会社は300万円という最低資本規制があるが、この規制を受けない会社設立を認める制度だ。1000万円に満たない資金でも株式会社を立ち上げることができる。また、設立後5年間はこの規制が適用されないため、5年後に資本金1000万円に達すればいいということになっている。
法施行後、約2年間で2万社以上の会社が設立された。その後、最低資本金規制の金額を満たした会社は1559社に上る。つまり、この制度を適用して、無事独り立ちした会社が1500社以上に上るというのだ。また、1円で起業した企業は900社以上に上る。
経済産業省などはこの制度を進化させることを検討している。現在、最低資本金制度を撤廃することを検討している。1円で起業して、5年経っても資本金が少ないというケースも企業の存続を認めようというのだ。この方針が本決まりになれば、多くの若者が起業しやすくなるといえる。
現在、ベンチャーの展開に最も支障となっているのは「成功者を尊敬しない風土」「失敗に寛容でない風土」であることは前述した。この風土を根本的に変えようというのが、教育面でのベンチャー施策だ。
シンガポールや中国、韓国などアジアの先進的な諸国では、欧米の一流のビジネススクールを国を挙げて招致するなど、ベンチャー人材を育成する施策が充実している。
日本もこうした諸国に対抗すべく、さまざまな施策を講じようとしている。
「起業家教育促進事業」では「モデル自治体」を選定し、そこで質の高い起業家教育プログラムを行おうというものだ。
授業時間6-12時間を使い、学校現場でベンチャーの重要性に関する講義を展開する。たとえば、株式会社ウィル・シードのプログラムでは、生徒が数カ国のチームに分かれて、それらのチームが指定された製品を作成し、銀行で換金して、時間内に一番豊かになったチームが勝ちになるという内容だ。
2004年度は群馬県や神奈川県、岡山県など、多くの自治体がこの施策を利用している。
「ベンチャーキャピタリスト人材能力開発事業」は、ベンチャーの力を見極める能力を持ち、財務や税務の知識を有する人材を育成するためのプログラムだ。「ジュニアコース」は入社1、2年目の社員を対象とし、期間は約3カ月を想定する。「シニアコース」は入社4、5年目の社員が対象で、約1カ月の期間をかけてプログラムを受講する。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)