起業家のByron Sebastianは昨年会社を起ち上げた際、ビジネスソフト業界最大のドル箱であるメンテナンス契約ビジネスに狙いを定めていた。
同氏の始めたSourceLabsは、製品の販売から売上を得るのではなく、法人顧客が保守費用に割り当てている数百万ドルの一部を少しずつ集めようとしている。このために、Sebastianはオープンソースをうまく利用しようとしているが、こうした新興企業はほかにも数多く登場している。
同氏によると、通常は無償で利用できるオープンソースソフトウェアが普及したことにより、小さな企業でも保守予算を狙って競争することが可能になったという。こうした予算は従来、顧客を囲い込んでいるソフトウェアベンダーにしか回らなかった。
「オープンソースのソフトウェアが普及したことで、サポートやメンテナンス分野の市場では激しい競争が生まれている」とSebastianは言う。「この部分に優れる会社が成功できるようになったのはこれが初めてだ」(Sebastian)
ソフトウェア業界の関係者のなかには、この業界でしばらく前から進んできている変化のスピードが、オープンソースの普及で加速していると主張する者も多い。ソフトウェアベンダー各社は、高額なライセンス販売ではなく、継続的に発生する保守関連の売上をますます当てにするようになっている。
また、大半のオープンソースソフトウェアはライセンス料が要らないため、オープンソースソフトウェアを販売する各社は、インストール、トレーニングなどのサービスを提供し、そこからの売上を中心にビジネスを構築せざるを得ない場合が多い。
このモデルでは、ソフトウェアを購入することは、携帯電話の年間契約を結ぶことに近く、多額の頭金と定期的な支払いが必要なローンによるクルマの購入とはあまり似ていない。
新興オープンソース企業は比較的規模が小さく実績もないが、サービス主導のビジネスモデルはソフトウェア自体よりもアフターサービスの方により大きな価値があることを示すものだと、アナリストや業界幹部らは述べている。先ごろサンフランシスコで開催されたOpen Source Business Conferenceでは、業界各社の幹部らが、オープンソース製品のソフトウェア購買に与える影響を述べていた。
かつてはほとんど注目されなかったサポートや保守サービスからの売上だが、ここに来て次第に大きな関心を集めている。企業各社のCIOによると、現在IT予算の最大70〜80%は新しい取り組みではなく保守費用に充てられているという。そして、その大半を受け取っているのは、そのソフトウェアを販売したベンダーだ。
たとえば、データベース最大手のOracleでは、ライセンスの売上よりも、製品アップデートやサポートからの売上のほうが多い。OracleのCEO、Larry Ellisonは昨年決算発表を行った際、「これは極めて利幅の大きいビジネス」だとして、同社の保守ビジネスを大きく宣伝した。
分析用ソフトウェアを販売するSASのCEO、James Goodnightは、Oracleの買収戦略について、PeopleSoftやRetekの買収をはじめ、どれも既存の保守契約を狙ったものだと述べている。
「Larry(Ellison)は、(ビジネスアプリケーション)業界の整理統合に向けて、手当たり次第に買収を進めている。彼はソフトウェアの革新は終わったと考えている。これからは保守関連の売上がすべてだ」(Goodnight)
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