前回に引き続きコンテンツに関する話題を取り上げたい。
コンテンツを制作するためには、資金が必要となる。日本ではできあがったコンテンツを流通する事業者がコンテンツ制作者への資金供給者でもあることが圧倒的に多い。投資ファンドなど第三者から資金調達するための様々な手法が法的に整備されたにもかかわらず、活用される機会が非常に少ないのが現状だ。このような課題をいかにして打破していくのか?まさに今こそ政策レベルで「戦略」的なアプローチが必要ではないか。
「政府に取り上げられただけでもありがたい」という声
今後四半世紀にわたって少子化や高齢化といった経済的・社会的基盤の変動を乗り越え、社会・経済において更なる成長、あるいは成熟を、国家としていかにして迎えるかを議論した「日本21世紀ビジョン」が内閣府を中心にまとめられている。同ビジョンでは、コンテンツやライフスタイルなど日本が現在優位に立っているといわれている消費を中心とした「文化創造国家」としてのあり方が前面に打ち出されており、「クール・ジャパン」などのソフトパワーという視点がふんだんに盛り込まれていると聞く。
すでに内閣官房には、特許や著作権などに関連した各種政策レベルでの対応を行うための機関として知的財産戦略本部が設置されている。また、それに先行する形で各関連省庁も動いている。経済産業省はコンテンツ産業を重点取り組み領域として指定し、専門部署を設置するなどして、コンテンツ制作環境の改善や外部資金流入を促進するための具体的取り組みを各種行ってきている。
例えば、コンテンツ制作会社と制作発注元との契約書の不在やそこにおける構造的不利益などを是正するための施策、著作権を対象とした資金調達スキームの整備、高等教育機関におけるコンテンツプロデューサーの育成プログラム整備などがそれにあたる。そして、これらの努力によって、制作会社の地位改善が業界団体などでも確認されるようになっており、これまでになされた努力は一定の成果を挙げている。
この一種の不平等条約的な地位の改善は、本来得られるべきものを得られていなかったという不利益を今後被ることがなくなったという点では評価されている。しかし、これだけではマイナスからようやく水面に浮き上がってきただけでしかないという見方もできるだろう。国家的戦略の重要領域とされているのであれば、更なる成長のために既存の産業構造に縛られない自由度を十分な加速をつけて与えるものでなければ、本来目的とされた内容とは異なってくるのではないか。
業界内部の方とお話をすると、「政府が日陰の立場にあった自分たちに注目し、何らかの支援策を打ち出してくれただけでもありがたい」という意見も聞こえてくる。しかし、それだけで満足していてはいけないのだ。
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