日本ヒューレット・パッカード(HP)は3月23日、RFID(無線ICタグ)の検証施設となる「HP RFID Noisyラボ・ジャパン」を千葉県木更津市に設立すると発表した。同ラボは、共同で運用を行うトーヨーカネツソリューションズの木更津市千葉工場敷地内に設置し、2005年5月末に運用を開始する予定だ。
日本HP マーケティング統括本部 インダストリマーケティング本部本部長の染谷優氏は、同社主催のセミナーにて行ったアンケート結果から、「CIOの関心事を聞いたところ、RFIDはセキュリティに次いで第2位となった。だが、利用促進を妨げている要因は、企業がRFID技術を理解していないことや、バーコードで十分だと感じていること、SIer任せになっていることなどだ」と指摘する。そこで同氏は、「RFID技術とIT技術を両立して運用する経験や知識が必要だ」と述べ、RFID Noisyラボがその役割を果たすとしている。
日本HP マーケティング統括本部 インダストリマーケティング本部本部長 染谷優氏 |
RFID Noisyラボは、顧客の物流現場を再現した環境でRFIDの実証実験を有償にて行う。物流現場は、通常電波的ノイズが多く発生する環境(=Noisyな環境)にあるが、このノイズを再現するため、同施設には実際の製造業や物流業で利用されるコンベヤ装置やパレット、パッケージ、フォークリフトなどが用意されている。こうした環境下で、RFIDが読み取り機を通過する際の速度と読み取り精度の相関性を測定したり、RFIDの読み取り精度を向上させるためのノウハウを検証したりする。
同ラボのRFIDの周波数帯域には、UHF帯を利用する。これは、2005年4月に予定されている電波法の改正で、UHF帯のRFID用途への開放が予定されているためだ。「この法案が通れば、日本国内でもRFIDの実用化が加速するだろう。UHF帯RFIDの普及に向けて、現場に即した実験施設が必要だ」と、日本HP マーケティング統括本部 インダストリマーケティング本部の三宅信一郎氏は述べている。
HPでは、すでに米国ネブラスカ州オマハ市に、社内用途向けおよび顧客の実証実験用としてRFID Noisyラボを開設している。日本のラボは第2号となり、同施設の運用にあたっては、HPとトーヨーカネツソリューションズのほか、アイデックコントロールズとスリークも協力する。各社の役割としては、物流設備の実装や庫内運用システムの構築実績があるトーヨーカネツソリューションズが搬送設備の実装を行い、RFIDを使った物流倉庫内業務のコンサルティング実績があるスリークが物流に関するコンサルティングを、RFIDタグや読み取り装置の実装経験を持つアイデックコントロールズが装置の実装を行う。HPは、すでに自社サプライチェーンにおいてRFIDの実装経験があり、ITインテグレーションのノウハウも活かしたうえで、システム設計や運用監視、全体のコンサルティングサービスを担当する。
同ラボの利用価格は、「実験期間や成果物によっても異なるが、最低ラインは200〜300万円程度」(三宅氏)。HPでは、同ラボにて収益を得ることよりも、「最終的にはRFIDを使ったサプライチェーンの効率化を促進させることが目的だ」としている。
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