携帯電話ビジネスは、安定した成長を続けている。PHSを除いた、国内の携帯電話加入者数は、累計で8500万人を突破。もはや携帯電話は、生活インフラと言っても過言ではない。
キャリアを比較すると、累計加入者数こそNTTドコモが群を抜いているものの、毎月の純増数では、抜きつ抜かれつの競争を繰り広げている。
KDDI au事業企画本部マーケティング統括部ブランドマネジメントグループリーダー 大山淳子課長補佐 |
だがここにきて、この業界勢力図が一気に様変わりする可能性が出てきた。2006年度の早い時期をメドに、番号ポータビリティが実施される見通しとなったのだ。番号ポータビリティとは、電話番号を変えずに他の携帯電話キャリアへ移行できる仕組みのことだ。これが実現すると、特定キャリアにユーザーが集まる可能性が出てくる。
KDDIにとって、携帯電話向けブランド「au」を、より浸透させるのは緊急課題だ。番号ポータビリティの導入前に、ブランドの基礎を固める必要がある。KDDI au事業企画本部マーケティング統括部ブランドマネジメントグループリーダーの大山淳子課長補佐は「auブランドを強くすることが、KDDIブランドを高めていくことにもつながると考え、本格的なブランディングに取り組み始めました」と話す。
調査会社などを利用しユーザーの声を収集
auが本格的なブランドマネジメントへの取り組みとして、最初に実施したのが顧客動向調査だ。実施手段は、大きく4つに分けられる。
このうち、大山氏が所属するマーケティング統括部で最も頻繁に使うのが(4)だ。新製品を生み出すには、現状の利用者の声に加えて、潜在的なニーズを掘り起こす必要がある。(4)はそのための材料となるというのだ。
auが実践する顧客第一主義
デザインに定評のあるauの携帯電話 |
大山氏は「とにかく、お客様の声に細心の注意を払っています。『顧客第一主義』と言葉で言うのは簡単ですが、実践するのは難しいのです。お客様の声を集めて貯めるだけではなく、それをいかに使っていくかに知恵を絞る必要があります」と語る。
顧客情報やユーザー動向は、現状のサービスや製品の質を向上できるだけでなく、新商品や新サービスのヒントにもなる。大山氏は、前者の例として「EZナビウォーク」、後者の例として「ダブル定額」のサービスを挙げる。
EZナビウォークは、ユーザーの携帯電話がGPS衛星を利用して現在位置を確認し、目的地まで案内するサービスだ。開始当初、利用者の期待が大きかった分、厳しい意見が多く寄せられたと言う。「操作性やユーザーインタフェース(UI)、速度に到るまで、細かな点を指摘されました。その声を踏まえ、機能面で改善を加えました。また、より楽しく利用したいという声に応えられるよう、アニメキャラクターを利用したUIにするなど、バージョンアップしていきました」(大山氏)と説明する。
一方のダブル定額は、携帯電話を利用したインターネットの接続定額サービスを進化させたものだ。一定利用までは月額2100円、それを越えると一定の超過料金がかかるが、どれだけ使っても月額4200円以上にはならない。ネット接続定額サービス開始当初は、4200円のプランしかなかった。ヘビーユーザーはそれを選ぶが、利用月によってネットの利用状況が変わる微妙なユーザーもいる。その思いを汲み取る形で、業界初のダブル定額サービスを開始したのだ。
auが、このように顧客の声にこだわるのには理由がある。そもそも通信キャリアは、顧客とのつながりが深い。家電メーカーのような売り切り型とは違い、サービスや料金の支払いで、毎月顧客との接点があるからだ。さらにKDDIでは、元々顧客の声を大事にする企業風土があったことに加え、小野寺正社長が「TCS」(Total Customer Satisfaction)を宣言。顧客第一主義に注力する方針を打ち出している。
TCSの効果は、第3者機関による調査でもすでに現われている。コンサルティング会社のJ.D.パワー・アジア・パシフィックが、2004年11月に7500人の携帯電話ユーザーに顧客満足度調査を実施。それによると、auは全国9地域中、北陸を除く8地域で、顧客満足度がトップだった。調査項目は「電話機(端末)」「企業イメージ」「各種費用」「非音声機能・サービス」「通話品質・エリア」「顧客対応力」の6つで、auは特に電話機と通話品質、企業イメージで評価が高かった。これはブランド力の表われでもある。
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