オープンソース界の大物らがソフトウェア特許を酷評

Stephen Shankland(CNET News.com)2005年02月02日 20時26分

 カリフォルニア州バーリンゲーム発--米国時間2月1日に、オープンソース界の2人のリーダーが、Linuxの生みの親であるLinus Torvaldsと共に、ソフトウェア特許を痛烈に批判した。これは、オープンソースの協力的なプログラミング哲学がMicrosoftを相手に繰り広げている戦いのなかで放たれた最新の一矢となった。

 Torvaldsは、当地で開かれたOSDL Enterprise Linux Summitの中で、「ソフトウェア特許は有益か。全くそんなことはない。ソフトウェア特許は明らかに問題だ」と語った。

 そのような考えを持っていたのはTorvaldsだけではなかった。ウェブサーバソフトApacheの共同開発者であるBrian Behlendorfと、Mozilla FoundationおよびOpen Source Applications Foundationの会長を務めるMitch Kaporも、パネルディスカッションの中で、Torvaldsの意見に賛成した。

 Behlendorfは、ソフトウェア特許が技術革新や研究への投資を促進するとの主張に反論する方法として、ソフトウェア特許のない世界を想像することを挙げた。

 「ソフトウェアのアイデアやアルゴリズムについて特許が取得できない場合、どの程度の開発費が失われるか。技術革新はどれだけ減少するか。その技術革新への投資がどの程度消失するか。(ソフトウェア特許がなくても)どれも消えて無くなったりはしないと思う」(Behlendorf)

 最近は、特許とオープンソースソフトウェアとが交錯する分野に注目が集まるような出来事が起こっている。IBMは先ごろ、500件のソフトウェア特許を無償提供して、オープンソースソフトウェアの開発に利用できるようした。Sunも同社のオープンソースOS、Solarisの開発に利用できるよう1600件の特許を公開する予定だ。またHewlett-Packardのある幹部は2002年に、Microsoftが自社の保有する特許を使って競合するオープンソースプロジェクトを攻撃する予定であるとするメモを著していた。さらに、欧州連合(EU)もこの問題について現在議論を進めているところだ。

 Microsoftはここ数カ月間、同社の特許ポートフォリオを拡大する取り組みを強化してきた。

 現在懸念されている点の1つは、オープンソースのプログラマーや顧客に対して特許攻撃が行なわれることにより、開発プロジェクト--とりわけ経済的、法的資源を持たないプロジェクトが中止に追い込まれる可能性があることだ。ある研究結果によると、Linuxは、保護体制が十分なプロジェクトであるにも関わらず、283件の特許を侵害する可能性があるという。なお、この研究には、特許攻撃を懸念する顧客に保険を販売している企業が資金を提供している。

 しかし、特許は攻撃手段であると同時に防御手段にもなり得る。IBMが契約条件に反してUnix技術をLinuxに流用したとしてSCO Groupが同社を提訴した時にも、IBMはSCOによる3件の特許侵害を理由に同社を反訴した。

 Torvaldsが、Linuxの保守・管理において彼の「右腕的存在」と評するAndrew Mortonは、特許による防御が有効と見ている。同氏はパネルディスカッション後に行なわれたインタビューの中で「われわれは将来、特許攻撃にさらされる可能性がある。その際、われわれを防御するため、IBMが先頭に立って反撃を行なう可能性があると考えている」と語った。

 Kaporも現状について懸念を示し、将来Microsoftが同社の特許ポートフォリオを使ってオープンソースソフトを攻撃するだろうと予想した。同氏は、そもそも特許を認められるべきではなかったソフトウェアが数万件も存在すると考えており、こうした問題を抱えるソフトウェア特許を大量破壊兵器にたとえてみせた。

 「われわれは特許という大量破壊兵器の使用について懸念を抱く必要がある。それがMicrosoftに対する最後の抵抗手段となる」とKaporは語り、さらに次のように続けた。「ソフトウェアを開発する上でオープンソースのほうがコスト的に優れたやり方であり、しかも顧客がそのことを理解し、さらにオープンソースソフトのほうがコストもかからず強固であるというような状況では、彼らはビジネスモデルをもはや維持できなくなり、完全に追い詰められる。そして、独占企業がそうした立場に置かれたとしたら、当然大量破壊兵器を発射するだろう。そうしないはずはない」(Kapor)

 なお、Microsoftはこの記事についてコメントしていない。

希望の兆し

 しかしTorvaldsは、ソフトウェア特許に関する取り組みに変化が生じる可能性があると指摘した。

 「ソフトウェア特許の問題は、オープンソースコミュニティが過去5年間にわたって、かなりはっきり認識していたものだ。私は、プロプライエタリベンダー各社もその事実を問題視し始めていると考えており、その点は朗報といえる」とTorvaldsは述べ、さらに「時間はかかるかもしれないが、最終的にそれが将来の解決につながることを期待している」とした。

 さらにBehlendorfは、「IBMによる特許の無償提供は大変すばらしいことであり、今後さらにそのような事例が増えることを期待する」と付け加えた。

 Linuxの普及促進に取り組むOpen Source Development Labs(OSDL)のCEO、Stuart Cohenは、IBMに続いて特許を提供する企業が出てくると確信している、と語った。

 「多数の企業がIBMの例に続くと考えている」と述べ、さらに「企業10社が数千件の特許を提供する構想はすばらしいと思う」(Cohen)

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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