オープンソース関連の知的財産(IP)問題を専門とする著名な弁護士が、共同プログラミングの手法を活用する開発者に無料でサービスを提供する法律センターの立ち上げに一役買うことになった。
コロンビア大学法学部教授のEben Moglenは、Free Software Foundationの法廷における代理人を務めたこともある人物だが、同氏は米国時間1日に発表された「Software Freedom Law Center」の運営に力を貸していくことを明らかにした。
同センターは声明のなかで、非営利のオープンソース団体の相談業務を行うために、知的財産を専門とする2人の弁護士をフルタイムで雇うことになると述べている。スタッフの人数は今年後半には4名に増えると見られている。同センターによると、彼らが行なう支援には弁護士の訓練、訴訟の支援、ライセンス問題の処理、各オープンソースプロジェクトに対して提供される成果物の管理などが含まれるという。
「このLaw Centerはフリーなオープンソフトウェア開発プロジェクトや、それに参加する開発者らの正当な権利や利害を保護するための、法的サービスを提供する目的で設立された。オープンソースの開発者には、必要な法的サービスを確保する手段がないことが多い」とMoglenは声明の中で述べている。
LinuxコンソーシアムのOpen Source Development Labsは、ニューヨークに開設される同センターの運転資金として400万ドルを提供した。同コンソーシアムには、IBMやHewlett-Packard、Intelなどコンピュータ業界の大手各社が名を連ねている。
オープンソース分野では、著作権や特許法を取り巻く法的問題がますます厄介なものとなっている。Black Duck Softwareという新興企業では、オープンソースソフトウェアとプロプライエタリなソフトウェアが混在しないようにするためのソフトを販売したほどだ。また、Open Source Risk Management(OSRM)は、オープンソースソフトウェアの使用をめぐり訴えられることを懸念する企業の訴訟費用をカバーする保険商品を販売している。
一方、LinuxのライバルにあたるMicrosoftやSun Microsystemsは、自社の製品に付帯する法的保護をさかんに売り込んできている。
オープンソースのソフトウェアが訴えられるというケースはあまりないが、懸念する必要がないとも言い切れない。SCO Groupは2004年に同社が保有するUnixに関する著作権をLinuxが侵害したと主張し、AutoZoneを訴えた。また、MicrosoftのSteve Ballmerは、Linuxが283件もの特許を侵害している可能性があるとするOSRMの調査結果に、世間の注目を向けさせた。
さらに、HPのある幹部は2002年に記したメモで、Microsoftがオープンソースソフトウェアに対し、特許に基づく攻撃を計画していると警告した。このメモによると、Microsoftが特に狙いを定めたパッケージはSambaだという。
同センターによると、SambaとFree Software FoundationはともにSoftware Freedom Law Centerの最初の顧客になるという。
Sambaには別の形の法的援助も寄せられている。OSDLは1月に、Sambaを開発したAndrew Tridgellをフェロー待遇で雇用したが、この待遇を得るのはLinuxの生みの親であるLinus Torvaldsに続いて2人めだ。同団体の関係者によると、OSDLはTorvaldsが法的攻撃を受けた場合に利用する予定の1000万ドルの弁護基金をTridgellにも適用するという。
Free Software Foundationの創設者Richard Stallmanは、現在General Public License (GPL)の見直しに取り組んでいる。GPLは、Linuxやその他数百件に上るオープンソースプロジェクトで利用されている。Software Freedom Law Centerはこの作業を支援するとしている。
同センターの監督には、Moglenをはじめ、Diane Peters(OSDL法律顧問)、Daniel Weitzner(MITコンピュータサイエンス&人工知能研究所主席研究者)、そしてLawrence Lessig(スタンフォード大学ロースクール教授)の各氏があたる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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