Stallmanは1980年代にGNU(Gnu's Not Unix)プロジェクトの一環としてGPLを著した。GNUプロジェクトは、プロプライエタリなUnixの制約から解放されたオペレーティングシステム(OS)のクローンを作るためのプロジェクトで、このことから「フリーソフト」という言葉が生まれ、Stallmanはこのコンセプトを促進するためにFree Software Foundationを設立した。
ウェブ最大のUnixおよびクロスプラットフォームソフトのインデックスサイトを自称するFreshmeatによると、現在GPLが適用されているソフトウェアプロジェクトの数は1万9000件以上にのぼり、Freshmeatのインデックスに掲載されている全プロジェクトの68%を占めているという。
最も知名度の高いGPLプロジェクトはLinuxだ。市場調査会社IDCの予測では、Linuxを基礎とするビジネスの市場規模は、2008年に357億ドルに達するという。GPLが適用されるソフトウェアには、Linuxのほかにも、データベースのMySQLやファイアウォールのnetfilter/iptables、UnixとWindows間でファイルを共有するためのSambaなどがある。
しかし、GPLに不満なプログラマには他の選択肢も存在する。1998年にオープンソースとして立ち上げられたMozillaプロジェクトや、幅広く利用されているApacheサーバソフトでは、別のライセンスが適用されている。またSun Microsystemsは、オープンソースライセンスCommunity Development and Distribution License(CDDL)を独自に作成しており、同社のSolarisにもこれが適用される可能性が高い。
特許問題
Sunが独自に作成したライセンスを選んだ理由の1つは、特許の問題だ。この厄介な法的問題にGPLがいかに対応するかは、本記事用の取材にこたえた数十人の専門家らが最も頻繁に指摘した課題だ。
この場合の特許問題は大きく2つに集約できる。1つは、GPLが、ソフトウェアを配布する人々に対し、そのソフトにいかなる特許取得済み技術が使用されていようとも、その自由使用を認めるよう明確に要求すべきか否かという点だ。もう1つは、GPLソフトウェアによって特許権を侵害されたとして訴訟を起こす人々に対し、何らかの罰則をもうけるべきか否かという問題だ。
これらは次期版GPLに向けて現在議論されている問題だ。「そうした罰則を定めれば、特許武装した著作権侵害者からオープンソースコミュニティを守るのに役立つかも知れない」と、ソフトウェアに対する特許全般を声高に批判するStallmanはいう。
Linuxベンダー最大手のRed Hatで、主席知財専門弁護士を務めるMark Webbinkは、2000年に修正の加えられたGPL草案に最初に目を通した人物だが、同氏によると、現行のGPLでは、ソフトウェアを配布している特許権保持者が、それらの特許に関する「暗黙のライセンスを付与している」との解釈も可能だという。しかし同氏は、特許に関する合意を作り、明示することが(問題解決の)有効な手段ではないかと指摘する。「ディストリビュータは、自分たちがどのような権利を人に与えているのか、曖昧なままにしておきたくはないだろう」(Webbink)
Sughrue Mion法律事務所に所属する弁護士のFrank Bernsteinによると、StallmanはApple ComputerのApple Public Source LicenseやIBMがよく使用するCommon Public Licenseのようなものを想定しているという。どちらのライセンスも、ソフトウェアに使用されている特許の利用権を認めており、仮にある企業/組織が特許権侵害で提訴した場合、その企業/組織の持つソフトウェア使用/配布権は消滅することになっている。
Bernsteinによると、特許に関する問題が解決されれば、オープンソースソフトウェアの(発展の)貢献者であり顧客でもある企業にとっては、GPLがさらに利用しやすいものになる可能性があるという。
しかし一方では、GPLに、ソフトウェア特許という考えを覆すための政治的手段としての役割を期待する声も上がっている。オープンソース文化を啓蒙する非営利組織Open Source Initiative(OSI)会長のEric Raymondは、「ソフトウェア特許に関する厄介で崩れかけた少数寡占体制がより深刻な被害をもたらす前に、それを解体する方法を見出す必要がある」と述べ、さらに「仮にGPL Version 3がその一助になるのであれば、(同ライセンスは)大変貴重な存在だ」と語った。
オープンソース提唱者のBruce Perensは、特許権侵害訴訟に関する罰則が、単に問題のソフトウェアの使用禁止から、フリーソフトウェアと分類される全てのプログラムの使用禁止へと強化されることを期待しているという。「次期版GPLに、例えば、ある人物が特定のフリーソフトウェアに関する特許権を行使したら、その人間のフリーソフト使用権が消滅するといった、相互防衛条項が盛り込まれることを期待している」(Perens)
これに対し、LinuxベンダーのNovellは声明の中で中庸もあり得ると語った。同社によると「知的財産保護とオープンソースは決して相反するものではない」という。
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