Bill GatesがMicrosoftのCEOを辞任すると発表し、IT業界を驚かせてから5年が経過した。その間、同社に変化はあっただろうか。
この問いに対する答えは、変わったこともあれば変わらなかったこともある、といえよう。ただ、新CEOのSteve Ballmerが、要求のきびしい自身のスタイルとかみ合うようMicrosoftの改革を進めたことは明白だ。だが一方で、世界最大のソフトウェアベンダーである同社では、オープンソース、訴訟問題、主力ビジネスの成長鈍化など、今も同じような課題が山積みになっている。
いずれは長年の友人であり同僚であるBallmerへの権限委譲がある、と予想されてはいたものの、5年前の2000年1月13日に行われた発表は大きな衝撃だった。
いつもにぎやかなBallmerは同社の顔を一変させた。1975年にPaul Allenと共同設立して以来同社のトップを務めてきたGatesは、Ballmerよりも内向的な技術オタクだ。
Ballmerは、同社を複数の事業部に分割し、従業員への報酬支払い制度を変更するとともに、Microsoftの中核製品を徹底的に見直し、これを基盤とした戦略拡大へと向かった。
Directions on MicrosoftアナリストのMatt Rosoffは、「ビジネスの観点から見た場合、同社は明らかにBallmerの会社になったといえる。事業部の7分割は大部分がBallmerの仕事だ。Gatesの指揮下では実施されなかっただろう」と述べている。
思いやりのある優しいイメージと大きな信頼感を顧客とパートナーの両方に植え付けたこともBallmerの生み出したもう1つの変化だ。同氏は毎年、顧客にとって利便性の高い製品を作り、顧客のニーズにより迅速に対応するよう、メールで社員に訴えている。
Ballmerは、CEO就任の当日からMicrosoftのイメージの問題に取り組んでいった。CEO就任後、初めていくつかの公の場に出た同氏は、同社の直面していたジレンマについて語った。同氏は2000年2月に、「個人的には、Microsoftはあまりよく理解されていない会社だと思っている。Windowsを作っている会社だと思われている場合もあるが、大半の人が知っているのは株式市場での成功だ。また、一部ではシリコンバレーの疫病神だとも思われている気がする。残念ながら、裁判の被告としても有名だ」とCommonwealth Club of Californiaで語っていた。
一方Gatesは、Windowsの新バージョンであるLonghornのリリースや、ホームエンターテイメント市場進出といった、Microsoftで最も複雑かつリスクも高い製品戦略の顧問に就任した。
Ballmer時代の成功を評価するのは難しい。就任発表以来、Microsoftには紆余曲折があった。2000年度にわずか230億ドル未満だった売上は2004年度には368億ドルに達し、同社の現金残高は3倍以上にふくれあがった。だが同時に、Microsoftの株価はGatesの辞任発表時の47ドル80セントから1株約27ドルにまで急落してしまった。
しかし、セキュリティの問題、技術予算の削減、オープンソースソフトウェアの人気上昇といった、Microsoftが数年前から抱えている問題の多くは、だれがCEOであっても直面しなくてはならなかったものだ。
「必然的な変化と、BallmerのCEO就任によって起こった変化を切り分けるのは容易ではない。CEOがだれであれ、Microsoftが対応を余儀なくされていた問題はいくらでもある」(Rosoff)
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