ソフトバンクBBやイー・アクセスの新規参入表明で、携帯電話市場の動向に大きな注目が集まっている。しかし、既存事業者並みの通信エリアを整備しない限り、ユーザーを多数獲得することは難しいと野村総合研究所では見ているようだ。
野村総合研究所 コンサルティング第三事業本部 情報・通信コンサルティング二部 上級コンサルタントの北俊一氏は1月12日、都内で開催されたプレスセミナーにおいて講演し、携帯電話市場の動向について紹介した。
野村総合研究所 コンサルティング第三事業本部 情報・通信コンサルティング二部 上級コンサルタント 北俊一氏 |
北氏はまず、2004年の携帯電話市場について「あらゆる意味で転機の年であるとともに、迷走の年だった」と紹介。具体的にはNTTドコモが2004年度の業績を減収減益と予測しているように市場の成長が踊り場に来ていること、新規参入を表明する企業が出てきたが、800MHz帯の割り当てをめぐって大論争が起きており具体的な方針が決定していないこと、総務省が番号ポータビリティの導入方針を決めたにもかかわらず、いまだに具体的な実現方式やスケジュールを各社が決め切れていないことなどが挙げられるという。
北氏は新規参入事業者の登場と番号ポータビリティの導入を「2つのいん石」と表現する。「既存事業者は(代理店に対する販売奨励金を削減したいが、それによって端末販売数が減りシェア低下につながるのは避けたいという)ジレンマ状態に陥っていた。しかし、いん石の登場で状況は変わり始めた」(北氏)
新規事業者が市場に参入することの影響について、北氏は「1分あたりの通話料金が5%程度下がるのではないか」と予測する。ただし、「安かろう悪かろうでは消費者は動かない」とも指摘する。「通話料金が安いだけで利用者が事業者を変えるのであれば、PHSの契約者はもっと伸びるはずだ。現在利用しているものよりも使い勝手が悪いものは選ばない。通話エリアの広さやつながりやすさをいかに整備できるかが新規事業者の課題だが、これは相当に高いハードルだろう」(北氏)
番号ポータビリティの影響については、NRIが9月に行った調査に基づく試算を紹介。これによると、番号ポータビリティが導入された場合、auの契約者数が491万人増加する一方で、ドコモは395万人減、ボーダフォンは17万人減、ツーカーは79万人減となるという。それでもNTTドコモの市場シェアは51.2%と依然として大きな存在感を保つことになる。
北氏は「問題は流出ユーザーの量よりも質だ」と指摘。長年同じ事業者を利用していた優良顧客が流出する可能性には注意する必要があると警告する。今回の調査では情報感度の高い人ほど番号ポータビリティを利用したいと回答していたといい、「情報感度が高くすぐに事業者を変えるような顧客はインセンティブが回収できず、事業者から見ていい顧客とは必ずしもいえない」とも紹介した。
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