総務省は12月14日、「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」の第5回会合を開催した。800MHz帯の再編と新規参入事業者への割り当てをめぐり、ソフトバンクBBとNTTドコモ、KDDIが激論を交わした。
まず論点となったのは、2012年までに行われる800MHz帯の再編方法だ。総務省案では現在NTTドコモとKDDIが細切れで利用している帯域を2012年までに815〜850/860〜895MHzに集約して両社に30MHzずつ割り当て、700MHz/900MHz帯を新規参入事業者に割り当てるとしている。これに対し、ソフトバンクBBは新規参入事業者にも早急に800MHz帯を割り当てるべきと訴えている。
第5回研究会の様子 |
ソフトバンクの案は、1.7GHz帯をドコモとKDDIにも10MHzずつ割り当てる代わりに800MHz帯の利用量を早急に減らし、新規事業者に割り当てるというもの。ドコモ、KDDI、新規事業者の3社が800MHz帯と1.7GHz帯/2.0GHz帯の両方を使うマルチバンド方式を導入すべきと訴える。
これに対してドコモとKDDIは、ソフトバンクの案は到底受け入れられないと反論した。NTTドコモ代表取締役社長の中村維夫氏は、ソフトバンクが利用を求めている825〜825MHz / 870〜880MHzは一部の地域で2007年ごろから利用可能だが、全国展開はできないと指摘。さらに、「ドコモが870〜880MHzを使用できないとすると、仮に1.7GHz帯を割り当てられたとしても(800MHz帯を利用する)2GのユーザーをFOMAに移行するために必要な周波数が不足する」とした。
KDDI代表取締役社長の小野寺正氏は「現状維持ならば周波数再編にかかる5000億円は支払う必要ないものだ。米国では新規参入事業者が(周波数を譲り渡す)既存事業者に対して保証金を支払っている」と紹介。KDDI自体は再編費用を新規参入者に求めるつもりはないとしたうえで、「2012年に(700MHz/900MHz帯の)周波数が空いた段階でイコールフッティングを求めるべきだ」とした。
既存端末はいつまで利用できるか
ドコモでは800MHz帯の再編に向け、現在800MHz帯を利用している2Gサービス「mova」を廃止する方針。ユーザーに対して3GサービスのFOMAへの移行を促すことで800MHz帯を空ける考えだ。KDDIは2007年頃から現行の800MHz帯/2GHz帯/移行先の800MHz帯の3つの周波数で利用できるトリプルバンドの端末を市場投入していく計画。時間をかけてユーザーに新端末への移行を促し、2012年までに周波数再編を行うとした。
800MHz帯を再編することで、現在利用中の2G端末が利用できるかという質問に対しては、ドコモ、KDDIともに「総務省案どおりならば、2012年まで利用可能」としたが、800MHz帯を新規参入事業者に割り当てた場合はサービス停止の可能性があるとした。
このほかボーダフォン代表取締役社長兼CEOの津田志郎氏は「新規参入事業者が複数の収益基盤を持つ場合、移動体通信事業において利益を度外視した料金競争を行う一方で、本業によって収益を確保することが考えられる。こういった形の新規参入には慎重な検討がなされるべきだ」と指摘し、ソフトバンクBBの安売り攻撃をけん制した。
同検討会はこれまでの事業者の意見を踏まえ、今後は構成員のみで議論を行う。2005年1月に2回ほど検討会を開催し、総務省に答申を行う見通しだ。
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