総務省は11月25日、「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」の第4回会合を開催した。800MHz帯の割当方針をめぐって、ソフトバンクBBとKDDI、NTTドコモの意見が衝突した。
最初に陳述を行ったのは、ソフトバンクBB代表取締役社長の孫正義氏だ。同氏は新規参入事業者も既存事業者と同じ競争条件(イコールフッティング)が与えられるべきだとしたうえで、800MHz帯は高い周波数に比べて電波到達距離が長いといった利点があること、ドコモとKDDIの両社が800MHz帯と2GHz帯を利用したマルチバンド方式を採用すると表明していることから、新規事業者にも800MHz帯を割り当てるべきだと訴える。
各社の代表者が集まり、意見陳述を行った |
800MHz帯は、現在ドコモが58MHz、KDDIが30MHz利用している。しかし割り当てられた周波数帯が細切れであるために広帯域を使用する高度な無線方式が利用できないこと、基地局と端末間の送信・受信用周波数が海外とは逆であるために九州で韓国との電波干渉が起きていることなどから、総務省は周波数を再編する方針を打ち出していた。
総務省の案では815〜850/860〜895MHzの周波数帯をドコモとKDDIにそれぞれ30MHzずつ割り当てるとしている。しかし、ソフトバンクはドコモ、KDDI、新規事業者の3社にそれぞれ20MHzずつ割り当て、2.0GHz帯もしくは1.7GHz帯とのマルチバンドで利用すべきだと主張する。
この案に真っ向から反対したのがKDDIとNTTドコモだ。KDDI代表取締役社長の小野寺正氏はまず、800MHz帯の優位性について「地方では差があるが、(基地局間の距離が短い)人口集中地域では周波数が高くても問題はなく、一概に800MHz帯が有利とは言えない」と指摘する。800MHz帯の再編についても「KDDIだけでも5000億円程度の費用がかかる。これは1年半分の経常利益が吹っ飛ぶ額だ。周波数再編は国家的プロジェクトだが、この経済的負担と作業を覚悟のうえでプロジェクト完遂に協力する。デジタル放送のように国の資金を使おうとは思っていない」と話す。
ソフトバンクBBが2006年にも800MHz帯を利用したいとしていることに対しては、「KDDIが総務省に返還した帯域を利用して800MHz帯再編に向けた移行を行う。もしここにソフトバンクBBが入れば、800MHz帯の移行ができない」(小野寺氏)と訴えた。
NTTドコモ代表取締役社長の中村維夫氏も、「800MHz帯と2GHz帯で、全国展開に必要な設備コストの差は約15%程度だ」と同社の試算を紹介。さらに孫氏がマルチバンド化に必要なチップは3ドル程度と紹介したことに対して、「アンテナを2周波対応にするためには1基地局当たりの設備コストが約250万円増加する。全国1万局として約250億円の増加になる。端末についても、チップ以外に出荷時の調整や品質検査費などを考えると1台あたり約1500円高くなる」と反論した。
新規参入を狙うイー・アクセスの代表取締役社長、千本倖生氏は「同じ周波数を割り当てることだけがイコールフッティングではない。公正競争を促進するためには、既存事業者とのローミングの義務化、既存事業者の鉄塔設備等の使用、携帯電話番号ポータビリティの開始が必要」と訴える。また、新規参入は2社が望ましいという持論を展開したうえで、「マルチバンドは新規事業者にとって二重投資となるため効率的ではなく、1.7GHz帯を20MHzずつ2社に割り当てるべき」とした。
次回の会合では、今回の意見陳述を踏まえた意見交換が行われる。開催日は12月14日で、3時間にわたって議論される予定だ。
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