NEC代表取締役社長の金杉明信氏は、12月1日から3日にかけて同社が開催する「C&Cユーザーフォーラム & iEXPO2004」にて「ユビキタス社会の実現に向けて」をテーマに基調講演を行った。現在の日本がユビキタスネットワークの実現に向けて世界の最先端といえる状態であることなどを述べ、NECのユビキタスへの取り組みを紹介した。
NEC 代表取締役社長 金杉明信氏 |
ユビキタスを「誰もがどこからでも、いつでもネットワークにアクセスして必要な情報を得られる状態」と改めて定義したうえで金杉氏は、現在の日本が世界で最もユビキタスという名にふさわしいものになりつつあるユビキタス元年にあるとした。これは、インターネットアクセス可能な携帯電話の普及によるところが大きいとしている。
現在、日本での携帯電話加入者数は8000万人を突破しており、「文字どおり老若男女のほとんどの人が利用しているツール。そのうち9割がインターネットアクセスが可能なもので、これに対して欧米でインターネットアクセス可能な携帯電話は1割程度」と国内の携帯電話によるインターネットアクセスが活発であることを指摘した。
ワイヤレスブロードバンドについては、各社の第3世代サービス加入者が順調に伸びていることと、無線LANでも新しい技術が出現しはじめていることなどを挙げ、同氏は今後展開する4Gでは携帯電話と無線LANが融合することが想定されると述べた。また、携帯電話や無線LANの利用する周波数帯域に関して、既存事業者であるドコモとKDDIに加え、ソフトバンクをはじめとする新規参入事業者数社での議論もあるため「技術の動向とともに、電波行政にも注目が集まっている」と現在の行政過程にも言及した。
ユビキタス環境の整備としてモバイルと対になるブロードバンド環境についても、日本では世帯普及率が3割を超え、毎秒100Kビットあたりの1カ月利用料金が0.09ドルと、2位の韓国(0.25ドル)に大きく差をつけてトップであることを指摘。ブロードバンドとモバイルの両面が充実し、同時にデジタル家電や自動車におけるETC・GPSの利用なども普及しつつある。こういった環境が整備されてきたのは、日本人が世界一要求の厳しい消費者であるということからのコンシューマー主導の市場形成、e-Japan戦略の成果である整備されたインフラなどが大きな要因になっているという。
「日本は、モバイルやブロードバンドといったネットワークの面でも、デジタル家電やテレマティクスといった端末面でも、ユビキタス化に向けた環境が世界で最も早く普及しているといえる。通信と放送、ITとネットワーク、家電とネットワークなど、技術やサービスの融合が始まりつつある。日本はユビキタス社会の実現に向かって進み出していて、世界でリードしているということは間違いないと確信している」と金杉氏は言う。
ユビキタスを活用するための企業の取り組みの視点として、金杉氏は3つのポイントを挙げた。ブロードバンドを活用して遠隔地にいる拠点や人間同士を結ぶ「顧客リレーションの強化」と、RFIDやモバイルツールを利用してワークスタイルの革新やサプライチェーンの可視化と工場、顧客市場動向などのリアルタイムな把握を可能にする「リアルタイム経営」、異業種連携による「新事業創造」がそれだ。
NECは、サーバ製品強化やソリューション開発を行いつつ、自社のパソコン生産現場でRFIDを活用して生産性の向上を実現。ブロードバンドソリューションセンターのオフィスを、ノートパソコンと無線LANを組み合わせたフリーデスク制とするとともにペーパーレス化も推進し、コピー数量75%減、会議開催数70%減といった成果をあげている。また、無線LANとFOMAをフレキシブルに利用できる「FOMA N900iL」を活用した「UNIVERGE FOMA連携ソリューション」ではモバイルセントレックスも実現している。
こうした事例をひきながら、金杉氏はNECが積極的にユビキタス社会の実現に向けて活動していることを強調した。
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