横行するTiVoのハッキング - (page 2)

　これまで何度も流れに逆らってきたTiVoには、その終焉を予想する声が数多く聞かれた。同社に批判的な人間のなかには、TiVoの提供する機能について、Microsoftとケーブルテレビ会社が簡単に真似できてしまうものだという者もいた。そうした見方を跳ね返して、今日まで生き残っている同社だが、MicrosoftがPCとホームエンターテイメントの融合を推進し続け、また他のDVRベンダーからのプレッシャーがTiVoに機能強化を迫るなど、同社に対するライバルからのプレッシャーは強まるばかりだ。

　しかし、TiVoは新機能の開発に伴うリスクにも直面している。その最たるものが大手コンテンツ企業の怒りだ。その多くは、同社に出資しているか、密接な提携関係にある。加入者が番組をレコーダから家庭用コンピュータに転送できるようにするTiVoToGoなどの新機能は、すでに一部の激しい怒りを買っている。

　このような動きから奇妙な立場に立たされているのがハッカーだ。彼らは、Cubanが説明するような形でTiVoの顧客の忠誠度を高めているが、それと同時に、ハリウッドなどのコンテンツプロバイダーとTiVoとの間にある緊張関係を悪化させるような機能への期待も高めてしまっている。

　著作権侵害に対する懸念は、音楽用の録音機器に対してすでに大きな影響を与えている。たとえばXM Radioは、同社の販売していた録音機器に、衛星ラジオ放送でさえも違法コピーや音楽共有の原因になってしまうとの懸念が生じたため、同製品の販売を止めてしまった。しかし、ハッカーらは既に似たような機器を市場に復活させている。

　TiVoの不正改造は以前から行われていた--ハッカーらは同製品が初めて登場して以来、その機能を拡張し続けてきた。

　しかし、ここ数カ月は特に関心が高まり、活動が活発化する現象が起きている。TiVoのハッキング情報が公開されている掲示板には熱心なファンが殺到した。また、TiVoのハッキングに関するFAQや、感電や保証の取り消しを警告するハウツーを載せたサイトや、MacによるTiVoハッキングを扱った専用サイトもある。

　読書好きなTiVoハッカー用には、この話題を扱った書籍が少なくとも3冊は出ている。

　TiVoはハッカーに対して今のところ無干渉のアプローチを取っているが、デジタル音楽業界の歴史が示しているのは、ハッキングの人気や機能によって状況が変わることもあるということだ。

　カリフォルニア州サンフランシスコにあるAmerican Technology Researchのメディア／コミュニケーションアナリスト、Rob Sandersonは、「最も微妙なのは、TiVoがまもなく市場に投入する製品に搭載予定のコピープロテクト機能だろう。これにより、TiVoユーザーはコンテンツをPCなど別の機器にムーブ（転送）できるようになるが、これはコンテンツ所有者にとっては非常に微妙な問題だ。ネットワーク接続された機器で、映画やテレビ番組を観られるようにすると、多くの人が懸念を表明し始める」と語った。

　ハッカーらはTiVoを使って既にこのような機能を実現している。2003年2月から出回っているCasselのMFS_FTP拡張を使えば、TiVoとPCの間で番組を自在に移動できる。

　TiVoが提案するPCへのファイル転送技術に対しては、8月に連邦通信委員会（FCC）が支持を表明している。ハリウッドやNFL（ナショナルフットボールリーグ）などは、この技術が著作権で保護された素材の不正配布を横行させると抗議したが、しかしTiVoは、同社のコピープロテクト技術が著作権侵害の横行を適切に防ぐとしてFCCを何とか説得した。

　TiVoのハッキング愛好者は、同社のコピープロテクト機能がハッカーたちの活動を失速させるだろうとの考え方を一蹴した。　

　「TiVosはデフォルトでビデオを暗号化し、またあらゆる修正も阻止するためにカーネルの署名をチェックする。何をするにもこのチェックを迂回する必要がある。TiVoToGoの制御を迂回するのも難易度は変わらない」（Cassel）