EMC幹部の見る各社ILM戦略、「日立は箱売り、IBMはサービスとのバンドル販売」

藤本京子(CNET Japan編集部)2004年11月02日 20時33分

 EMCのマーケティング&テクノロジー担当主席副社長であるハワード・エリアス氏が来日した。11月2日に開催された同社イベントにて基調講演を行うためである。講演にて同氏は、EMCの提唱するILM(情報ライフサイクル管理)とそれを実現する製品群について説明し、その後記者会見を行い、同社の戦略や競合関係など数々の質問に答えた。

 EMCは、昨年のLegato、Documentum、VMwareの買収に続き、今年10月にはDantz Developmentというソフトウェア企業を約5000万ドルの現金で買収した。Dantzは、中小企業向けにバックアップ/リカバリソフトを提供する企業だ。エリアス氏によると、EMCがここ数年で買収したソフトウェア企業はこれで15社にのぼるという。

EMCマーケティング&テクノロジー担当主席副社長 ハワード・エリアス氏

 ただしEMCでは、ソフトウェア技術をすべて買収だけで手に入れようとしているわけではない。エリアス氏は「買収はメディアの注目が集まりがちだが、EMCがこれまでに費やしたソフトウェア関連の研究開発費は、企業買収金額の合計を上回る」と述べ、EMC独自のソフトウェア開発に力を入れていることを強調した。

 EMCがソフトウェアに注力するのは、ILMがソフトウェアなしには実現できないためだ。このILMを基にした戦略は、EMCのみならずIBMや日立製作所といった各ベンダーも打ち出している。これらの企業とEMCとの戦略の違いについて、エリアス氏は「ILM実現において重要となるのは、それぞれの段階に合わせたストレージ製品を用意し、それらを自動的に使い分けるためのソフトウェアを提供すること。製品ラインアップに関して言うと、EMCは他社には負けない」と述べ、EMCが他社と比べてILM実現により近いソリューションを提供できるとした。

 エリアス氏は、「日立のアプローチは、大きな箱を用意し、その箱の中の面倒を同社がすべて見るという考え。これはどちらかというとメインフレーム的なアプローチだ。一方のIBMは、ILMに限ったことではないが、プロフェッショナルサービスやコンサルティングが必要だというアプローチとなっている。つまり、ハードを販売してIBMグローバル・サービス につなげようという考えだ」と分析する。どの戦略が良くてどれが悪いと言うつもりはないとしながらも、同氏は「EMCの提供するものは、バランスが取れていると思う。製品ラインアップが多く、適切なアプリケーションもそろっている。パートナーと共に、顧客にとって一番よいものを提供しようという考えだ。ストレージはEMC製品を使い、ソフトウェアは別のものを使うといったこともできるし、その逆も考えられる。顧客の選択肢が広くなるのだ」と説明する。

 ILMにおいては、テープストレージも含めたソリューションを積極的に展開している企業もあるが、EMCはテープストレージをどう位置付けているのだろうか。エリアス氏は、EMCが6月に米ADICとリセラー契約を結び、同社のテープストレージを販売するとしたことについて触れ、「テープストレージは、オフサイトでのアーカイブなど、長期的な保存が必要で、あまりアクセスされないデータに関してのみ利用されるものだ」とした。ただ、同契約に日本は含まれておらず、エリアス氏も「多くのアーカイブ、リカバリなどは、ここ3年程度でテープからディスクへの移行が進むだろう」と述べた。

 EMCは、かつてIBMのメインフレーム上におけるシェアが非常に高かったが、のちにIBM自身が同プラットフォーム上でのシェアを巻き返すという動きがあった。この点についてエリアス氏は、「90年代後半、あえてメインフレームから遠ざかる戦略を打った。メインフレームからオープンシステムへの移行が急速に進むと予測したためだ」と述べる。ただ、この戦略は「賢明ではなかった」とエリアス氏。EMCでは、予測したほどメインフレームが廃りを見せなかったことから、2年前にメインフレームへの投資を再開したのだという。その1年後、同社は再びIBMとメインフレーム技術でのライセンス共用、互換性保証などにおいて合意に至っている。「その後EMCはこの分野でシェアを回復した」とエリアス氏はいう。

 ストレージは多くのサーバベンダーからも販売されており、各ベンダーはサーバとの組み合わせ販売戦略などを行っているが、エリアス氏は「サーバベンダーがストレージとの組み合わせ販売などで優位な価格を打ちだそうとしているが、その都度サーバベンダーは、私の知る限り例外なくストレージのシェアを落としている。戦略を考え直すべきではないか」と述べ、サーバベンダーの脅威は全く感じていない様子を見せた。

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