次世代ディスプレイの1つとして注目される有機EL(OLED)ディスプレイ。製造技術面からテレビで利用できるほどの大型化は難しいとされてきたが、セイコーエプソンは5月に40型のフルカラー有機ELディスプレイを開発し、大型化にめどをつけた。
10月20日からパシフィコ横浜で開催されている、フラットパネルディスプレイに関する展示会「FPD International 2004」ではセイコーエプソン OLED技術開発本部 本部長の飯野聖一氏が講演し、有機ELテレビの開発に向けた同社の取り組みを紹介した。
「大型化できなければ有機ELは勝ち残れない」
セイコーエプソン OLED技術開発本部 本部長の飯野聖一氏 |
飯野氏はまず、ディスプレイ市場の現状について紹介する。ディスプレイ市場で最も大きいのはテレビ市場で、規模は約2兆1000億円。次いでデスクトップモニターが約1兆7000億円、ノートPC用と携帯電話用がいずれも約6000億円となっている。このうち、有機ELのライバルとなる液晶ディスプレイ(LCD)が高いシェアを占めるのは携帯電話向けなどのモバイル用途だ。「LCDはまず携帯電話やPDAなどの(小型・低消費電力という特性を生かせる)市場から入り、デスクトップモニターなどの置き換え市場へと移行した」と飯野氏は分析する。
デスクトップモニターやテレビ市場では、依然としてブラウン管(CRT)のシェアが大きい。この点について、飯野氏は自発光型としての強みがあると分析し、「有機ELもCRTと同じ自発光型であり、LCDのできないことをしないといけない。つまり、大型化できないと有機ELは勝ち残れない」と話す。
有機ELは小型・薄型化が可能で液晶よりも輝度が高いことから、LCDを代替するとも言われている。しかし飯野氏は、「半透過型のLCDはバックライトを消しても外部からの光を利用して画像が見えるため、消費電力が4mW程度と非常に少ない。しかし、有機ELディスプレイを光の強い屋外で見ようとすれば輝度を上げる必要があり、かなりの電力が必要となる。これは長時間駆動を求められる携帯電話では致命的だ」と指摘。消費電力の面から、小型ディスプレイの分野ではLCDに分があると見ている。
価格はLCDの半分程度、2010年頃にブレイクへ
エプソンが有機ELで狙う市場は、10インチから40インチ程度のノートPCやデスクトップモニター、テレビなどの領域だ。10インチ以下は三洋エプソンイメージングデバイスが生産するLCDを、40インチ以上はリアプロジェクションテレビを投入する考え。
実用化にはまだ高精細化や画質、寿命、消費電力などいくつかの点で課題があるというが、同社はすでに同社では2.1型、12.5型、40型という3種類の有機ELディスプレイの開発に成功しており、実現可能性は見えてきたという。
高精細化に関しては、成膜に利用するインクジェットの着弾精度がプラスマイナス15μm程度だと紹介し、「200ppiのディスプレイなら、40μmの幅に収めればよく、十分対応できそうだ」と自信を見せる。ただし寿命面では課題が多いといい、テレビに求められる5万〜10万時間という寿命を実現するためには有機ELに合わせた材料やパネルが必要だとした。
価格面では、LCDよりも構造が簡単なことから「原理的にはLCDの2分の1から3分の2程度の価格が可能だ。“1インチ5000円”に近づけるのではないか」という。このため、「地上波がアナログ放送からデジタル放送に切り替わる2010年頃には有機ELディスプレイはブレイクするのではないか」と期待を寄せた。
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