イー・アクセスは、次世代モバイルブロードバンド技術TD-SCDMAの実証実験の進捗状況を発表するとともに、今後の携帯電話事業参入について同社の展望を語った。
現在、携帯電話が使用する周波数としては800MHzと1.5GHzが割り当てられている。この周波数帯に関しては既存キャリアの間で再編成を行うという話も出ているが、現時点で総務省がまとめた案では新規参入事業者は利用できない。
新規参入用として総務省が従来から発表していたのは2GHz帯だ。これを利用したTDD方式での実証実験をイー・アクセスは進めている。2004年5月から行っていた実験フェーズ1では、1セル/1セクタでの電波伝搬特性とスループット測定を行った。今回は実験フェーズ2にあたる部分の発表だ。
実験フェーズ2では、3セル/9セクタでの実験が行われた。実験内容は、前回の実験から対象とされている電波伝搬特性に加え、ハンドオーバ試験、セクタスループット測定、アプリケーション試験、干渉試験、負荷試験だ。設置されたセルは、従来の虎ノ門セルに加えて、四谷セルと渋谷セルの合計3セル。この複数のセルを利用して、ハンドーオーバや干渉環境下での実験を行った。
ハンドオーバは、Mobile IP技術を利用して実現している。接続する基地局が移動しても端末のIPアドレスを保持することで、データ通信がシームレスに行えるようになる。実験では、移動する車両内からストリーミング放送を受信して行った。画面上に接続中の基地局IDを表示した状態で撮影したビデオでは、ストリーミング画面に問題はない状態で、基地局IDが変化する様子がわかった。
セクタスループットに関する実験では、他の基地局を停止させた状態でのFTP速度が4.40Mbpsであるのに対し、隣接局からの干渉を受けた状態では4.06Mbpsとなった。干渉時の差分は8%という結果で、干渉環境下でも高いパフォーマンスが維持できるということが実証された。
イー・アクセス代表取締役兼CEOの千本倖生氏
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イー・アクセス代表取締役兼CEOの千本倖生氏は、TDD方式は通信速度が上下非対称でありデータ通信において効率的な伝送が可能ではあるが、PHSをはじめ音声サービスも十分な品質で行えるとした上で「音声通話のサービスはもちろん提供するが、メインはデータ通信だと考えている。音声通話はすでに3大キャリアが提供しており、そこと戦うほどの体力はわたしたちにはない。ADSLで培ったデータ通信のノウハウで、シームレスに利用できるモバイルブロードバンドを実現したいと考えている」と語る。
携帯電話事業への新規参入については何社かが手を挙げているが、イー・アクセスは現在実証実験中である2GHz帯に加え、追加された1.7GHz帯に関しても書面で正式に参加意向を表面。1.7GHzFDD方式に関しても積極的に取り組んで行きたいとしている。
ソフトバンクが既存事業者用である800MHz帯を強固に希望しているのに対して、イー・アクセスはあくまでも新規事業者用とされている2周波数帯での参入を目標として実験を進める予定だ。これは、電波の質の良さなどを考えたものではなく、新規事業者用として利用可能だというものに素直に取り組む方針によるものと同社は説明する。「今後、800MHz帯にも新規参入してよいということになったら、もちろん手は挙げる。しかし、現在そうではないところに訴訟などの手段で割り込むのがよいことだとは思っていない」と千本氏。一方で「新規事業者用とされている帯域に、既存キャリアやその関連事業者が入るというのは全くおかしな話。そういう事態になるならば断固として反対する」ともしている。
今後の展開としては、現在進行中である技術策定の結果を待つ形ではあるが、目標としては免許の取得を2005年度中に完了し、2006年度中にはサービスを開始したいとしている。
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