チップメーカー各社がパフォーマンス向上を目指してマルチコアプロセッサの世界に突入するなか、ソフトウェアベンダー各社がこの流れに追いつこうと悪戦苦闘している。
コンピュータが搭載するプロセッサ数に基づいて、サーバソフトを販売するという広く普及した手法が、プロセッサの設計やサーバ機能の変化を受けて時代遅れになろうとしている。
チップメーカー各社は現在、1枚のシリコンに2つのプロセッサコアをエッチングできるようになっており、こうしたデュアルコアプロセッサがまもなく主流になろうとしている。新しいチップは現行モデルよりはるかに強力で、複数のタスクを効率的に処理できる。しかし、ソフトウェアライセンス料を計算する際に、デュアルコアチップをプロセッサ何個分として数えるべきかという問題が、いま最も重要な懸案となっており、また他の新しいチップ技術がこの境界をさらに曖昧にする可能性もある。
ソフトウェアメーカー側はこの問題を認識しているが、今のところは解決策を1つに絞れていない。リサーチ/コンサルティング会社Illuminataのアナリスト、Jonathan Euniceは、「ハードウェアに関する多数の技術トレンドが、ソフトウェアライセンスに与える影響が認識されていない。その影響は技術だけでなく、商慣習や購入パターンにも及ぶ」と述べている。
IBMは、2001年からPower4サーバにデュアルコアチップを搭載し、こうしたチップの製造を推進してきた。Sun MicrosystemsとHewlett-Packard(HP)も、今年に入ってIBMのこの動きに追随した。だが、IntelのXeonやAdvanced Micro Devices(AMD)のOpteronのような広く普及したx86チップのマルチコアバージョンが登場することで、プロセッサの定義は今後ますます難しくなっていくだろう。
チップ製造最大手のIntelは、今週開催中のデベロッパーカンファレンスで、 来年後半に投入するサーバ用のデュアルコアチップを皮切りに、自社のマルチコアプロセッサをサーバやデスクトップPCにまで拡大する計画の詳細を明らかにした。ライバルのAMDも、Opertonサーバプロセッサのデュアルコアバージョンを来年半ばまでにリリースする計画だ。
デュアルコアチップは、定義を難しくしている問題の1つに過ぎない。SunやIntelでは、プロセッサコアを8個ないしは16個持つマルチコアチップの開発も進んでいる。マルチスレッディングという別の技術も、シングルプロセッサコアを2基以上に見せかけるものだ。さらに、1台のサーバを数十の独立したパーティションに分割し、それぞれで別のオペレーティングシステムを動作させ、計算処理の負荷の変動に応じて処理能力を変えることもできるようになっている。
マルチコアチップや他の技術的な変化が、この先ライセンスの方法にどのような影響を与えるのかは依然として明確になっていない。だが、業界幹部やアナリストらは、近い将来わかりやすく一本化されたシステムが登場する可能性は低いと話している。
これらの新技術に関するソフトウェアライセンスの問題は、買い手側も十分認識している。医療業界向けにカスタムソフトウェアを提供しているMedPlusという会社で、技術サービス担当のシニアディレクターを務めるGregg Siegfriedは、「非常に頭の痛い問題だ。Intelのハイパースレッド対応CPUでソフトウェアライセンスが無効になったり、仮想化技術を使うことで従来のライセンスの境界があいまいになったりと、すでに多数の問題を経験してきた。この分野ではどんどん問題が発生している」と語っている。
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