Microsoftによるこの動きから、現在成果が現れつつある。まもなくWindowsベースのエンターテインメント用ハードウェアが数多く市場に登場するが、そのなかには「Portable Media Centers」と呼ばれる携帯機器も含まれている。簡易版のWindowsで動くPortable Media Centersには、同社が新たに開発した「Janus」という不正コピー防止用ツールも採用される。この技術が登場すれば、サブスクリプション形式で配信される楽曲を携帯音楽プレイヤーに初めて保存できるようになることから、こうしたサービスを提供する各社には追い風になると見られている。
Creative Labsは来週にも自社版のPortable Media Centers製品をリリースする見込みで、またiRiverなどの競合各社でも今後数カ月以内に対抗製品を発売すると見られている。これらの新しい携帯機器は、その多くがNapsterのようなサブスクリプションサービスをサポートすることから、ユーザーは1カ月あたり20ドル以下の料金を支払うだけで、ハードディスクに音楽を目一杯詰め込めるようになる。
だがMicrosoftでは、普通のPCを家庭にあるさまざまなエンターテインメント機器をつなぐハブに変えることも狙っている。この場合に使われるのは、Media Center Editionや今後発表されるXP ReloadedバージョンといったWindows XPベースのOSだ。Microsoftが理想として掲げているのは、Windowsベースのシステムをハブとして、そこに音楽やビデオ、写真などのメディアファイルを保存した上で、テレビやステレオなどにこのファイルを送信して再生するというものだ。また、このハブに保存したメディアファイルを携帯機器に転送した上で、外に持ち出すことも可能になるとされている。
しかし、Appleの存在が、こうしたビジョンの実現を難しくしている。
iTunesミュージックストアは、2003年4月にまずMacintosh向けとして立ち上げられたが、この音楽販売サービスは1度は死にかかっていたデジタル音楽配信ビジネスを、ほとんど一夜のうちに蘇らせたといえる。当初はiTunesを軽視していたBill Gatesも、数カ月後にはMicrosoftが同様のサービスを行うのもよいアイデアかもしれないと認めるようになった。ただし同氏はこの時「大した儲けにつながるものではない」と譲歩していた。
マイクロソフト側からすれば、問題はAppleがかつてのNetscapeとあまりに似すぎていることだ。Netscapeはかつて、Windowsと競合するプラットフォームとなりそうなブラウザを持っていたため、Microsoftを脅かす存在だった。もし開発者がWindowsではなくNetscape上で動くソフトウェアを書くようになれば、ユーザーはWindows OSの代わりにブラウザ経由でコンピュータを操作することになり、Microsoftの影響力の大半が失われる可能性があると、同社の幹部らは恐れていた。
こうした意味では、iTunesとiPodの組み合わせはプラットフォームとはいえないかもしれない。しかし昨年のなかばには、この組み合わせが家庭のマルチメディアネットワークの中核機能を担い始めたようにも見え、Microsoftが狙いとするところと重なってきたため、同社はより直接的な反撃を開始した。
「Microsoftとしては、市場にどんなことが起こっても、Windows Mediaを使った音楽配信サービスを確実に長続きさせたいところだ。もしMicrosoftでもダメだとなったら、他社がこのビジネスで生き残れるチャンスはほとんどなくなってしまう」(Rosoff)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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