自社で独自に音楽販売サービスを立ち上げることにしたMicrosoftの判断は、メディアビジネスで自社の顧客との直接競合を避けるという先の方針を覆すものだ。AppleがiTunesミュージックストアを立ち上げた当時、Microsoftの経営陣は自社でも同様のサービスを立ち上げるべきとの意見を一蹴していた。
Windows Media事業部マネジャー、David Caultonは2003年の5月に、「閉じた独自サービスを独力で構築するより、多数のパートナーがこのようなサービスを構築できるようにする戦略が今でも良いと思っている」と述べていた。
Microsoftには、米国、欧州、日本の監督機関による独禁法関連の厳しい監視が続いており、同社が音楽ビジネスでできることは限られている。
米国ではすでに、Windows OSの奥にあり、MicrosoftブランドのCDストアが表示されるInternet Explorerの起動リンクを削除するよう命じる司令が出されている。ヨーロッパの監督機関は、オンラインメディアビジネスの強化を狙ったMedia Playerの使い方について同社を強く批判しており、MSNストアの不適当な宣伝も同様に厳しく監視する可能性が高い。
また、WindowsへのMedia Player搭載に関連し、独禁法違反ですでにMicrosoftを提訴済みのRealNetworksといったライバルの存在もある。
Manatt, Phelps & Phillipsに所属する独禁法法専門の弁護士、Kevin O'Connellは、「Microsoftのライバルはどこも、同社が音楽業界のライバル排除にWindowsの独占を利用しているかどうか注視しているものと思われる。MicrosoftがWindowsの独占を利用してNetscapeの販売チャネルをつぶしていったときの独禁法違反訴訟と同じようになる」と語った。
すべてはWindowsを守るために
これらの障害はどれも無視できないもので、とりわけ実際のマージンが1曲数セントに過ぎない楽曲のダウンロード販売ビジネスなどでは、そのことが切実な問題となる。Microsoftが本当に目指すものは音楽の販売とはほとんど関係がなく、すべてはWindowsの販売と深く関係している、とアナリストらは指摘する。
「Microsoftは、ビジネス上の大きな目標として、PCの販売拡大を目指してWindowsフォーマットを売り込み、より多くの人々に アップグレードしてもらいたいと考えている」と、Directions of Microsoftのアナリスト、Matt Rosoffは語る。「同社は、パートナー企業が過去数年間にわたって行ってきたことを検討した上で、Windows Mediaを核にした戦略を機能させるためには、自社で音楽配信サービスを行う必要があるとの結論に達したと思われる」(Rosoff)
この数年間で、Microsoftは自社のマルチメディア用ソフトを普及させる動きをますます活発化させており、Walt DisneyやAmerica Onlineの親会社にあたるTime Warnerといったメディア関連大手との関係づくりを進めながら、これらのパートナー企業にWindows Mediaフォーマットを利用してコンテンツを配信するよう説得を続けてきている。
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