--呼び方は違っても、これまでの戦術や戦略が利用できるということですか。
先ほど申し上げた通り、5年前に比べると、われわれははるかに全体的な視点から、製品開発、市場開発、需要喚起に取り組むようになりました・・・ムーアの法則がもたらすイノベーションや統合の種類は違っても、枠組みそのものに違いはありません。
--今のところ、Intelの稼ぎ頭はPC事業ですが、その他のデジタル市場に進出する意欲も見せていますね。しかし、従来の発想ではソニーやSamsungと戦うことはできないのでは。
われわれはソニーやSamsungと戦おうとしているのではありません。両社を最大の顧客、または顧客の一部とするような、新しい製品カテゴリを創出しようとしているのです。さまざまな意味で、この2社はデジタル市場の行方を握る存在ですし、Hewlett-PackardとDellもこの流れに乗ろうと、家電分野への進出を推し進めています。
これは非常に興味深い動きです。家電市場ではすでに、製品開発のペースに変化の兆しが現れています。家電製品にPCの技術が急速に組み込まれ、かつては5〜6年だった設計サイクルが、PCに迫る水準まで短縮されようとしているのです。
--消費者市場では、SamsungとDellが火花を散らそうとしていますが、Intelは不可知論者を決め込んでいますね。勝者にも敗者にも製品を供給しようという魂胆ですか。
われわれはどの企業にも製品を供給するつもりです。しかし、私の見方はあなたとは少し違う。デジタルホームに関する標準が登場し始めていますが、いずれはすべてのユーザーが、こうした標準を求めるようになるでしょう。技術的なことは分からなくても、無線ネットワークで他の機器と連動し、自動的に最適の設定を選択する製品、周りに17歳の若者やネットワークマネージャーがいなくても、箱から出せばすぐに使うことのできる製品が欲しいと、だれもが思うようになるでしょう。
そのためには相互接続性を実現し、家電メーカー間の協力を促進していかなければなりません。1つの会社の製品しか使わないという消費者はいませんからね。今後、デジタル家電が増えていけば、だれもが複数のブランドの製品を同時に使いたいと思うようになるはずです。そのためには、ある程度の相互接続性を確保しなければなりません。Intelは標準に準拠した製品を開発することによって、相互接続性の向上に貢献してきました。
--Wintel同盟についてお聞きします。Wintel同盟がMicrosoftとIntelの成功に大きく寄与したことは周知の事実ですが、状況は変わりつつあります。Microsoftはこの古巣を飛び出そうとしました。しかし、思ったほどの成功を収めることはできなかった。Intelも同様です。
Intelの人間が「Wintel同盟」の話をしたことがありますか。われわれがこの言葉を積極的に使ったことがありますか。われわれはいつだって、Microsoftとこういうことをやるとか、パートナーシップの内容はこうだという話しかしてこなかったはずです。
--情報筋によると、Windows XPのシェアは約40%から45%だとか。つまり、まだ多くのユーザーがWindows 95や98を使っているのです。デュアルコアプロセッサ搭載PCへのアップグレードを促進するためには、どんなアプリケーションが必要なのでしょうか。
Windowsのシェアの話はわれわれには分かりませんが、コンピュータを買い換えれば、XPがついてくることは事実です。XPではさまざまな機能強化が行われましたから、個人ユーザーに関する限り、アップグレードのメリットは十分にあると思います。
企業に関しても、Windows XP SP2の登場により、アップグレードの条件はそろったと思います。SP2はITを活用しているすべての企業の悩み--「ウイルス」の問題に取り組むものです。私の理解が正しければ、SP2を導入することによって、ウイルス感染の危険性を大幅に削減することができるはずです。
われわれはチップの設計を強化し、製品化し、市場に送り出してきました。デュアルコアプロセッサを搭載したPCは、従来のPCよりも少ない消費電力で高い性能を発揮することができます・・・動作速度を6、7、8、9GHzに引き上げるためには、200Wもの電力を消費するプロセッサと大きなダイが必要です。ところが、デュアルコアプロセッサを採用すれば、同じダイエリアをより低い周波数で使うことができ、PCの実質性能を引き上げることができるのです。
--Intelは海外事業の拡大に取り組んできました。今では海外での売上が、国内の売上をしのぐまでになっています。第三世界の新興市場に対しては、どんな戦略を用意していますか。
すべての市場に適用できるような万能の戦略はありません。しかし、市場ができる前に進出したイスラエルのような例を除くと、営業拠点を設け、ブランドの認知度を高めるというのが一般的なやり方でした。PC需要を喚起するためには、ブランドが大きな役割を果たすのです。
現地で得た経験を活かすこともあります。最近ではこうした知識をもとに、製品をカスタマイズするようになりました。豊富な労働力とコストの安さを持つ魅力的な市場もあります。投資の内容や理由は国によって異なりますが、必ず対象国の特性を活かすようにしています。
--現地の政府が協力的か、そうでないかも、投資判断に影響を与えるのでしょうか。先日は中国との間でWi-Fiをめぐる騒動がありましたね。
これは逆のケースです。われわれはこの12年間、中国政府と良好な関係を育んできました。中国市場への投資や現地企業の設立にも積極的に取り組んできました。こうした実績があったからこそ、中国は対話のテーブルにつき、これまでの方向性を変えることに同意したのです。
こうしたプレゼンスがなければ、われわれが世界標準の意義や、中国が国家として、また輸出国として、世界標準に準拠することの重要性を説くことはできなかったでしょう。中国は態度を変えず、「そういう規則だ」の一言で片づけていたはずです。
中国政府が変化に前向きに取り組んだことは特筆すべきです。これは、われわれが中国と知的な対話を続けてきたことの証にほかなりません。
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