ブロードバンド関連法案
Hillaryは、その後、6月24日(米国時間)に、テクノロジー企業に有利な内容の法案を上院に提出した。同じ日に、Kerryはカリフォルニア州サンノゼで自らの技術政策およびブロードバンド政策を宣言する演説を行い、ワシントンではブッシュが同じトピックについて演説している。Hillaryの法案提出が、大統領候補らの演説と同じ日に重なったのは、おそらく偶然ではないだろう。
Hillaryの提案は、ここ数年、経済的に大きく後退しているBuffaloやRochesterといったニューヨーク州北部の田園地帯での支持獲得をもくろんだ内容になっている。「彼女は、2000年の上院議員選のときから、技術的に遅れた地域のブロードバンド化を考えるようになった」と、Hillaryの側近と技術関連政策の策定に取り組むPPIのAtkinsonは言う。「長年大きく遅れをとっているニューヨーク州北部を再活性化することはHillaryの選挙戦の目玉でもあった。Hillaryが採用した提案の多くは、PPIによって提供されたものだ」(Atkinson)
今回提出した法案の1つは、国または方自治体が発行した条件付き技術債権を購入したすべての者に対して、最大1億ドルの税額控除を提供するという内容のものだ。他の4つの法案も合わせると、合計で3億ドル以上もの資金がブロードバンド関連技術、特に技術的に遅れをとる地域で提供される場合の補助金として費やされることになる。4つの法案とは、S.2577 (2500万ドル)、S.2578 (1億ドル)、S.2579 (1億2500万ドル)、S2582 (5000万ドル)を指す。
微妙な政治的立場を簡単な言葉で表すのは難しいが、強いて言えば、Hillaryの提案はKerryの案ほどではないが、Bushの案よりも、連邦政府がITの動向に介入する度合いが大きい内容になっているといえよう。Kerryはスピーチで、貿易制限、企業福利厚生の向上、教育予算の拡大、税控除といった政策を語った。一方ブッシュは、減税、電力線によるブロードバンド普及の支援、ブロードバンド・プロバイダに連邦保有地へのアクセスを許可する際のプロセス合理化を強調した。
いずれにしても、技術に関しては「言うは易し」である。重要なのは、実現できるかどうかだ。
その点からすると、Hillaryは決して高成績といえない。ITICが各国会議員のIT業界への貢献度を成績表としてまとめたスコアカードによると、Hillaryは、「上院での最初の2年間で、技術関連企業に有利な法案に賛成したか」という項目で、わずか50点という落第評価をつけられている。また、無党派の雑誌National JournalでHillaryは2003年、リベラル寄りの得票をした実績が89%という評価を得た。これはTed KennedyやTom Daschleよりも高い得点だが、理由はHillaryが規制賛成派だからであって、これはテクノロジー業界の利益と相反する。
さらに、この2年間にわたる同氏の議員活動はほとんど成功していない。同氏はこれまで、125の法案および改正案を提出したが、上院で可決されたのはそのうちわずか2つ、実際に法律として施行されたものは1つもない。上院では可決されたものの下院で否決された2つの法案のうち、1つは「家族介護者」への補助金として9050万ドルを支給するという内容のもので、もう1つは、2003年8月7日を、「National Purple Heart Recognition Day(名誉負傷勲章受章者に賛辞を贈るための休日)」とするという内容のものだった。
しかし、それでもHillaryとテクノロジー企業のロビイストたちは互いにすり寄ることをやめようとしない。先のITICは、Hillaryに落第点をつけたにもかかわらず、名誉ゲストスピーカーとして彼女を理事会に招待している。政治的気骨のあるニューヨーク州選出上院議員Hillaryとしては、面目躍如というところだろうか。
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