今週から大統領予備選が始まったが、民主党の候補者たちは、これまでIT分野の話題にあまり触れてこなかった。しかし、仕事の海外流出をめぐる議論が、各候補者のIT分野に対する関心の在処を明らかにするきっかけになるかもしれない。
米国製造業の海外流出は、代々民主党候補者が大統領選に際して取り上げてきたテーマだ。そして今回も、共和党のGeorge W. Bush大統領に対する攻撃材料としてこの話題が取り上げられており、米国時間19日のアイオワ州党員集会、そして次週のニューハンプシャー州予備選まで議論が交わされそうだ。その結果ロビイストたちは、企業の海外シフト--オフショア化--に対する各候補者の立場を細かく追跡している。オフショア化は、多くの企業が競争力維持のために必要だと主張しているものだ。
Information Technology Association of America(ITAA)の会長、Harris Millerは、「私が懸念を抱いているのは、候補者のなかに、政策の争点をつくり出そうと熱心になるあまり、貿易振興に反対するレトリックやアンチグローバル化を訴えるレトリックを弄する者が出てきた時に、この状況でいったいどんなことが起こるか、ということだ」と語った。
民主党候補も共和党候補も、スパム、コンピュータセキュリティ、インターネットでの課税、オンラインでの海賊行為など、IT関連の問題で激論を引き起こす恐れのある事柄には触れていない。そのため、今回の大統領選では、オフショア化の問題が、この分野における最大の争点となっている。
IT業界のオフショア化に関しては、民主党では、ミズーリ州選出のRichard Gephardtおよびオハイオ州選出のDennis Kucinichの両下院議員に加え、マサチューセッツ州選出の上院議員John Kerryも反対の立場を取っている。
Kerry陣営のウェブサイトには、「来年には、米国だけでも、海外の労働力によって提供されるITサービスの価値が160億ドルへと倍増し、2007年にはさらに3倍増となる460億ドルに達するだろう」と記されている。同サイトで、Kerryは、自分が大統領に選ばれれば、この動きを減速させるようにすると述べている。同氏はまた、海外にあるコールセンターの社員に対して、その所在地を開示することを義務づける法案を、昨年11月に提出している。
ITAAのMillerは、Howard Dean候補の選挙費用調達を個人に可能な範囲で手伝ったとした上で、IT関連企業は「貿易関連問題で米国をリーダー役から引き吊り降ろすことを、自らの選挙運動の基本とした大統領選候補者には、どの候補者であれ、ひどく失望するだろう。もちろん、予備選では(選挙に勝つために)そうしたポーズをとる候補者がよく現れるのだが。ただ、両党の候補者とも一般有権者の前に立たなければならないという時には、土壇場になって心変わりすることがあるのも、我々は承知している」と述べている。
IT業界の声援はLiebermanに
おそらく、IT関連で最も幅広い実績を持っている候補者は、コネチカット州選出の上院議員、Joseph Liebermanだろう。同氏はプライバシー、自由貿易、そしてテレビゲームの規制など、幅広い分野の事柄に関して連邦議会で活発な活動を繰り広げてきている。そんなLiebermanがIT業界で人気が高いのも、実は驚くべきことではない。アイオワ州とニューハンプシャー州の世論調査で1桁台の支持率にとどまっているLiebermanは、民主党候補のなかでは税金や貿易に関する規制への姿勢が最も緩い。グローバルな市場にフォーカスする業界なら、どの分野であろうと、税金や貿易は重要な問題であり、できるだけ規制は厳しくないほうが好ましい。
「明らかに、LiebermanはITの支援に関して、最もはっきりとした立場と実績を持っている」というのは、Electronic Industries Alliance(EIA)会長のDave McCurdy。EIAは、約2300社の企業が会員に名を連ねるIT分野の業界団体だ。「疑いなく、Liebermanはブッシュ政権よりも、さらにハイテク業界寄りだ」(McCurdy)
Liebermanは昨年5月、IT企業の経営者やベンチャーキャピタリストの支持を獲得した。彼の支持者の中には、Kleiner Perkins Caufield & ByersのJohn Doerrや、Handspring CEO(最高経営責任者)のDonna Dubinskyなどの名前も見られる。このほか、Broadcomの会長兼CTO(最高技術責任者)であるHenry Samueli、Cisco SystemsバイスプレジデントのDan Scheinman、そしてBay PartnersというベンチャーキャピタルのJohn FreidenrichらもLiebermanを支持している。Liebermanは、連邦議会におけるIT関連の投票結果--特に貿易関連に重点が置かれている--をまとめているInformation Technology Industry Councilから100%の「生涯評価」を獲得している。
Liebermanは2000年の大統領選以前に、H-1Bビザの発給数増加、インターネット税猶予期間の更新、研究開発税控除の延長、そしてアンチスパム法の推進など、重要な問題で技術業界側の立場を取ってきた。
しかし社会問題に関しては、Liebermanはインターネットのわいせつコンテンツや暴力的なビデオゲームに執拗に反対する選挙運動を展開し、人権擁護団体や憲法修正第一条問題に取り組む団体から非難を浴びてきた。同氏は過度の暴力を扱っているとしてビデオゲームメーカーを非難しており、昨年はPlayStation 2の「Grand Theft Auto III」というゲームが「言い訳もできないほど不快である」と発言している。同氏はまた、Best Buy、Circuit City、およびWal-Mart Storesなどの企業にも、未成年者への暴力的ゲームの販売を中止するよう圧力を加えたこともある。
また、Liebermanは、ネットで成人向けのコンテンツを配信するサイト用に、".xxx"もしくは ".sex"というトップレベルドメインを設けるべきだと主張。「このアイデアが実現すれば、実質的にネット上に赤線地区を設けることになるが、それにも多くのメリットがある。この方法なら、ネットのオープンなアーキテクチャーに制限を加えなくても、子供たちをポルノから効果的に守れるし、また大人の持つ言論の自由の保障に関する権利を侵害せずに済む」と、Liebermanは2000年6月に述べている。
Lieberman、Howard Deanの両陣営は、昨年スパムを問題に取り上げた。スパムを取り締まる法律、 Can-Spam (Controlling the Assault of Non-Solicited Pornography and Marketing) 法は、この時点ではまだなかった。
EIAのMcCurdyはまた、マサチューセッツ州上院議員のJohn Kerryも高く評価している。ニューハンプシャーでの調査によると、KerryはDeanと並ぶか、もしくは鼻の差でトップに立っている。「KerryはIT業界に近づこうと努力してきており、実際に数多くの問題に関して詳しい知識がある。ただし、いつでも我々を味方するとは限らないが」と述べたMcCurdyは、さらに「John Edwards上院議員は、Kerryに比べて少し弱く、またGephardtは貿易や海外アウトソーシングに関するその立場から、そもそもお話にならない」と付け加えた。
前バーモント州知事のDeanは、民主党候補者のなかにはめずらしく、インターネットに関する政策を文書にまとめている。「Principles for an Internet Policy」(「インターネットに関する政策の原則」)というこの文書には、よくネットを利用する人間にはお馴染みのテーマがいくつか取り上げられている。たとえば、インターネットの「End-to-End」な構造的特色を守ること、などだ。しかし、この文書には、政府による規制を求める部分もみられ、たとえば「経済的立場や居住地域の違いに関係なく、誰もがインターネットにアクセスできる」よう連邦予算の増額を求めるなどの記述がある。
Dean陣営は、選挙資金集めや組織作りのために、インターネットを大いに活用しているが、 大統領選挙人を3人しか出せない州から出馬した、国政に関しては部外者に過ぎない候補者としては、この選挙活動のやり方が驚くべき成果を上げてきている。Deanは、早い時期にはレースをリードしていたが、その後人気が低下しており、アイオワ州で16日に実施した調査では、Gephardt、Kerry、前陸軍司令官のWesley Clarkとデッドヒートの状態だ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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