IBMは、「エンタープライズ・サービスバス(ESB)」という新技術の知名度向上を図る計画を年内にも始動させ、統合ソフトウェア市場の人気にあやかろうとしている。
統合ソフトウェアは、ビジネスアプリケーション間のデータ移動を扱うもので、数十億ドル規模に及ぶIBMのインフラソフトウェア事業の重要な部分となっている。IBMは昨年、自社の統合製品を補うために、ESBの開発に取り組んでいることを明らかにしていた。
IBMのWebSphere 6 Javaアプリケーションサーバには、この「Jetstream」(開発コード名)という技術を使った新しいメッセージングソフトウェアが導入される。今秋詳細が明らかにされるWebSphere 6は、第4四半期に出荷が予定されている。IBMのWebSphereインフラ担当ディレクター、Bob Sutorによると、同社は来年第1四半期にこの計画の第2段階を完了する予定だが、この段階では新開発ツールがリリースされるという。
ビジネスアプリケーションへの支出には二の足を踏む企業各社も、統合ツールには資金を注ぎ込んできている。この背景には、既存システム間の連携を強化すれば、既に所有しているソフトウェアをさらに効率的に活用できるようになるとの企業側の考えがある。
Forrester Researchでは、アプリケーションサーバや統合/データベース管理用ソフトウェアへの企業による支出は、今年8%増加すると予想している。
ESBとは何か
さまざまなシステム間での情報の共有には多くのコストがかかり、多くの企業が長年頭を悩ませている問題だが、ESBはこの情報共有コストを下げるための技術だ。MITのSloan School of ManagementがFortune 500社の最高情報責任者(CIO)を対象に実施した最近の調査によると、ビジネスアプリケーションの統合は、効率向上を図ろうとする企業の最大の課題だという。
たとえば、ある航空会社で、メインフレームのシステムから自社のウェブサイトに顧客データを移動させる必要があるとする。この場合、ビジネスアプリケーション同士を接続するのに、通常ならプロプライエタリな統合サーバを使わなければならない。これと対照的に、ESBではJavaやWebサービスプロトコルなどの業界標準およびツールを利用する。
ForresterアナリストのMike Gilpinは、こうした標準ベースのアプローチがコストの引き下げにつながるという。「ESBを使えば低コストで済み、特定のベンダーにしばられるリスクも減らせる」(Gilpin)
調査会社のGartnerでは、2007年までにESBが従来型の通信ミドルウェアに置き換わると予測している。ただし、現在のESBは、たとえば2つのパッケージアプリケーション間で顧客記録のフォーマットを変換できるが、複雑なビジネスワークフローを自動化することはできないなど、まだ成熟した統合ソフトウェア製品に比べて機能が限定されている。
ゴールは共通性の向上
IBMの全体的な戦略は、同社の統合製品--特に、広く普及しているWebSphere MQやWebSphere Business Integration製品の間の共通性を高めるというものだ。同社は2001年にCrossWorlds Softwareを買収した際、WebSphere Business Integrationを獲得した。IBMは既存製品の統合によって、社内開発コストを抑え、顧客のコンピューティング環境を簡素化することができる、とアナリストらは述べている。
「われわれは、製品を増やすことばかりを目標にしているわけではない」とIBMのSutorは言う。「わが社の目標は、役割が明確に定義された製品の集まりが、互いにうまく機能するようにすることだ」(Sutor)
IBMでは当初、JavaとWebサービスプロトコルだけをサポートする個別のESB製品を開発する予定だった。しかし同社はこの方針を改め、既存の製品を統合して、Web Services Transaction(WS-Transaction)やReliable Messaging(WS-ReliableMessaging)などの新標準をサポートするようにした。このアプローチにより、顧客は既に所有しているものを使い続けながら、さらにコスト効率のよい新ESB機能に移行することができる、とSutorは話している。
「個々の製品には、徐々に新機能が追加される。各製品には、その製品のタイプにふさわしい標準が追加され、少しずつそれぞれが調和して機能するようになるはずだ」(Sutor)
IBMは、オープンソース開発プラットフォーム「Eclipse」で構築されたWebSphere Studio製品シリーズに、ESB指向の新ツールを導入するとSutorは述べている。この新しいプログラミングツールは、WebSphere MQなどで用いられている既存の通信プロトコルや、ワイヤレス機器や組込機器などで使用されるプロトコルに対応しているという。
IBMのこうした動きは、統合ソフトウェア市場全体がシンプルで安価なオプションに重点を移している傾向を反映している。大手インフラソフトウェアプロバイダ各社は、既存の統合サーバに代わる簡素な製品に取り組んでおり、またESB技術を使用したメッセージソフトウェアを既に販売している新興メーカーも複数ある。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス