手紙を書くにもスキルは必要である。AcevaのSrivastavaはまず、潜在的な顧客を慎重に調査するという。そして、その会社に手紙を出す。手紙の内容は、その会社の財務状況の分析から始まり、Acevaのインボイス作成ソフトウェアをインストールしていたら前四半期の収益がどれくらい改善されていたかを解説するものだ。
顧客について研究調査するという原則は、広報活動でも同じである。たとえば、広告代理店が電話してきて、いきなりインターICバス対応の双方向ユニバーサル非同期送受信機の話などされても、どうしていいかまったくわからない。そんな専門用語でまくしたてられても、こちらにとっては外国語同然である。
これがもし、「われわれのクライアント企業が高誘電率ゲート絶縁膜を使った新しいソリューションを開発しました」という風に言われれば、「それは何とも魅力的だね。早々に説明を聞こうじゃないか」となるだろう。
手紙を書くときは、受け取った者に封を切らせる方法も心得ていなければならない。さきほどのヘッドハンターは、電話やメールではなく手紙を使って自己紹介するという。多くの幹部たちは手紙を自宅に持ちかえって週末に目を通すからだ。幹部の手に渡れば、管理スタッフによって、ふるいにかけられて捨てられる心配がない。本人に封を切らせることができるというわけだ。
手書きにすれば、他の手紙よりもさらに読み手の目を引く。マーケティング担当バイスプレジデントなどという役職の者にはファンレターなどまず来ないので、手書きの封筒を見ただけで興味を引かれるだろう。
このように手紙が見直される傾向が進むと、19世紀に行われていた他の慣習も息を吹き返すかもしれない。近い将来、こんなことにならないともかぎらない。ロビーに召使いを立たせておき、訪問者には銀の皿に名刺を入れてもらう。「Canonのセールスマンに帰るように言ってくれ。今日は気分が悪いから、誰にも会うつもりはない」などと重役が言う。今はまともに昼食もとらないことが多いが、マティーニ3杯付きの贅沢な昼食も復活するかもしれない。
この件についてご意見があれば、どうか手紙を送っていただきたい。
筆者略歴
Michael Kanellos
CNET News.comのエディター。担当分野はハードウェア、科学・調査関連、およびスタートアップ企業など。コーネル大学とカリフォルニア大学ヘイスティング校法律学部を卒業、過去には弁護士や旅行関係のフリーライターとしての経歴も持つ。
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