「IT運用は“守り”ではなくむしろ“攻め”」:ITILを推奨するHP

藤本京子(CNET Japan編集部)2004年07月02日 20時05分

 「IT部門における課題はガバナンス不足にある。つまり、IT戦略の策定や費用のコントロールがうまくなされていないのだ。ガバナンスを行うために、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)を実践すべきだ。そうすれば、“守り”とされていたIT運用は“攻め”となる」。日本ヒューレット・パッカード(HP)コンサルティング・インテグレーション統括本部シニアソリューションアーキテクトの藤田政士氏は、同社主催のHP WORLD Tokyo 2004にて講演を行い、このように語った。

 ITILとは、1980年代後半のイギリスでITコストの増大が問題となった際、その解決法として適切なITコストの算出方法を示そうと、英国政府機関のCentral Computer and Telecommunications Agencyが策定したものだ。Libraryという名の通り、7冊の冊子から成り立つもので、うち2冊は日本語化されているという。

日本HPコンサルティング・インテグレーション統括本部シニアソリューションアーキテクトの藤田政士氏

 藤田氏は、主に日本国内におけるこれまでのIT運用を「独裁政治」と表現する。システムは1社のみのものを採用し、限定的な機能をクローズドなアーキテクチャで利用していたためだ。このような独裁政治の下では、IT費用の把握が不十分になりがちで、「ITプロジェクトにおいて、開発ベンダー=運用ベンダーとなる場合が多く、どこまでが開発でどこからが運用かという区別が明確でない」という。さらに、開発・運用を情報子会社に委託している場合、「企業としてIT予算をコントロールするのではなく、運用子会社へのポリティクス(政治)として予算が組まれている」と藤田氏は述べ、合理的なIT運用のために必要不可欠なIT費用の管理が行われていないと指摘する。あるシステムベンダー子会社では、実際に「親会社からIT運用コストを3分の1にしろと言われたが、人件費やハードウェア、ソフトウェアなどのコストを詳細に把握していないため、どこをどうコスト削減していいのかわからない」という事態に陥ったケースもあるという。

 こういった問題点を克服するために、藤田氏はITILを勧めている。ITILは、あらゆるIT管理の成功事例と失敗事例を基に作られたベストプラクティスであり、その効果はすでに証明されているという。ITILは10年以上経った現在でも更新され続けており、「特定の技術や地域、時代に左右されることのない普遍性がある。そのため多くの欧米諸国で先進的IT構築概念として取り入れられた」と藤田氏は説明する。

 ITコストを適正な価格に抑え、かつ品質を保つためにITILがポイントを置いているのは主に2つ。それはITインフラ構築とITサービス管理だ。インフラ構築においては、時代の変化に耐えうる柔軟性のあるインフラを構築することが大切だとしている。ここでいうインフラとは、ハードやソフトのみならず、プロセスや制度も含まれる。これにより、毎回ゼロからシステムや体制を構築する必要がなくなるというわけだ。

 また、サービス管理においては、あらかじめサービスの品質とコストについて、IT提供者と利用者の間で合意し、品質とコストの管理プロセスを確立すべきだとしている。「SLA(Service Level Agreement、サービス内容合意書)を導入することが大切だ」と藤田氏はいう。

 藤田氏は、ITILは一般モデルであるため抽象的で、各企業では組織ごとに合致したモデルの構築が必要だとしながらも、「ITILはIT運用のビジネスモニタリングを提供するもので、IT財務管理において非常に大きな意味をもつ」と述べる。「IT運用能力を拡大することで運用コストが削減でき、新規開発の早期展開や新技術の利用が可能となる。つまりIT運用は、企業にとって“守り”の戦略ではなく、むしろ“攻め”の戦略なのだ」(藤田氏)

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