DDIポケットの明日はどこにあるのか - (page 2)

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中国での成長は盤石か

 PHSの振興団体であるPHS MoUによると、PHSは27カ国以上で導入または導入を前提にした検証が行われているという。実際には東アジア圏を中心に導入が進んでおり、前述したとおり、なかでも中国での成長ぶりには目を見張るものがある。

 1997年に地域単位で導入されたサービスは地方都市を中心に急速に普及し、昨年には北京市内、そして今年には上海市内でもサービスが提供されるようになっている。固定電話サービスを提供している中国電信と中国網絡通信(China Netcom)が、地域単位の免許上は固定電話の延長という「ワイヤレスローカルループ」という位置付けでサービスを提供しており、携帯電話とは異なる位置づけにある。そのため、料金も携帯電話の4分の1程度というほぼ加入電話並みのレベルであり、市内を活動範囲とするような学生たちにはぴったりのツールとなっている。

 また、SMS(Short Messaging Service。現在はPHSサービス間や携帯電話とのやり取りも可能になっている)や、PIAFS(PHSにPCをつないで、高速なデータ通信をするための規格)などによる最大64kbpsのネット接続サービスやネットブラウザも装備している。さらには、発信者課金という日本では当たり前の料金体系を取っている点で、両端課金の携帯電話、中でも比較的機能性に劣るGSMとは競争優位を築いており、PHSの急速な普及に貢献していると思われる。

 しかし、固定電話の延長上であるがゆえの規制や、免許発行が延期されたものの強力なライバルになることは間違いない第3世代(3G)携帯電話の存在を考えると、いかに1億加入を超えようと中国におけるPHS優位を楽観視することはできない。特に、加入電話に先行して普及した移動体通信であるため、SMS利用もかなり拡大しているとはいえ依然として音声通話が中心だ。テキストメッセージングやウェブブラウジング、着メロなどのサービスはまだ成長初期にあるといってよく、機能的優位がゆえに生存が可能になった日本市場での状況とはいささか異なることは明らかであろう。また、基地局などの設備導入は米国系2社と中国系1社が寡占しており、今後、独自の発展を歩む可能性すら否定できない。

日本市場におけるPHSの未来

 振り返って日本国内市場におけるPHSの将来はどのようなものになるだろうか。

 現在、PHS市場はデータカードでPCやPDAのモバイル利用のためだけに加入している比率がおよそ3分の1と推定できる。また、法人向けの無線構内電話ソリューションとして、PBXとともにシステムで導入されているケースも多数あり、これらも3分の1程度あるだろう。すると、通話可能なPHS端末を主端末として利用している加入者は残る3分の1=160万加入程度でしかないのではないか。

 前者の3分の2は、多分に携帯電話との併用者である可能性が高く、CDMA2000 1xEV-DOやHSDPA(ドコモが2005年に導入を予定している高速パケット伝送技術)といった3G携帯電話サービスで幅広く定額制が導入され、かつオープンにインターネットアクセスを認めることになったら、カードユーザーは激減する可能性がある(もちろん、ここに至る過程で携帯電話ビジネスにおけるゲートウェイサービスモデルの再評価と新たな収益モデルの確立が必須だが)。また、すでに規制緩和されている大口相対取引による携帯電話料金の割引と、導入が予定されている携帯電話番号可搬(ポータビリティ)制(PHSから携帯電話、あるいはその逆への可搬性は保障されないが、加入電話番号をPBXで端末へ割り振る限りは問題ないだろう)をセットにすれば、PHSを現在導入している法人需要の多くはモバイルセントレックス(携帯電話を用いた内線電話などの付加価値サービス)へと一挙に流れることは想像に難くない。

 また、全体の3分の1を占める音声サービスとして単独にPHSを利用している加入者であっても、本人の自由意志ではなく両親が子供に買い与えている場合や、逆に高齢の親に子供が贈るといったケースなどでは、料金的優位がなくなれば継続的利用が保証されないことも多いのではないだろうか。MtoM(マシン間コミュニケーション)通信のように、コイン駐車場のメータや自動販売機などに搭載されている分の加入も、現行契約分はともかく、今後定額制のサービスが携帯電話でも一般的になれば端末コストも量産効果が生じ、あえてPHSを採用する根拠が薄れる可能性もあるだろう。

 このように、日本国内でも現状顧客を維持できなければ、固定費が比較的小さく事業効率が高いPHSサービスであっても事業継続は難しい。すなわち、新たな訴求価値を得ない限り存続が困難な事業領域であることは間違いない。もちろん、規模の経済を維持するために現在は複数のグループに分散している顧客をM&Aなどによって収束することは不可能ではないものの、成長の糧を見つけない限り依然として焼け石に水となることは明らかであろう。

 海外で通信事業そのものに参入することの困難さは前述のとおりであり、付加的なサービス・レイヤにのみ参入する可能性が残されているものの、そのサービス/プロダクトモデルの創出にはかなりの努力が必要だ。このことは、やはり前述したドコモのiモードの不調や、携帯王国フィンランドの総合通信事業者Soneraの携帯コンテンツサービス子会社Sonera Zedが他社営業地域でも地道な展開こそ実現しているものの、華々しい成績を収めているとは言い難いことを肝に銘じる必要があろう。

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