Wi-Fi特許訴訟が勃発--シスコが最初のターゲットに

Marguerite Reardon (CNET News.com)2004年06月24日 14時50分

 ワイヤレス技術を開発しているカナダの小さな会社が、Wi-Fi機器や半導体のメーカーを相手に特許侵害訴訟を起こしたが、訴えられた企業のなかにはネットワーキング業界大手のCisco Systemsの名も混じっている。

 カナダのWi-LAN(本社:アルバータ州カルガリー)は米国時間23日、Ciscoがライセンスを受けずにWi-LANの技術を製造/販売したとして、同社をカナダの連邦裁判所で提訴した。Ciscoは、家庭用ネットワーキング製品のLinksysと、Aironetワイヤレスブリッジおよびアクセスポイントでこの技術を利用している。

 Wi-LANは、1994年に米国とカナダでOFDM(直交周波数分割多重)技術に関する複数の特許を取得したが、同社はこの技術が無線LAN標準の802.11aおよび802.11gや、Wi-Fi製品のベースになっていると主張。同社はまた、Wi-LANのOFDM関連特許は、ブロードバンドワイヤレスやWiMax製品に採用される、802.16aや802.16eといった新しい標準にも適用される、と考えている。

 Wi-LANは2002年にも、Redline Communicationsに対して同様の特許訴訟を起こしていたが、今月に入って両社は和解に達した。この和解内容の詳細は明らかにされていないが、Wi-LANによると、Redlineは過去に遡って同技術の使用料を支払うとともに、将来も使用料の支払いを行うことに同意したという。

 Wi-LANの広報担当バイスプレジデントKen Wetherellは、同社が業界全体に渡って特許権を行使していく計画であることを明らかにした。

 「われわれが特許を持つOFDM技術なしでは、802.11a/gは生まれなかった。これらの特許権をもっと早く主張しなかったのは、市場の発展を遅らせたくなかったからだ。しかし、同技術がしっかりと定着したいま、われわれは自社の知的財産を保護しなくてはならないと感じている」(Wetherell)

 携帯電話でCDMA(符号分割多重接続)技術の使用に対して、機器メーカーに料金の支払いを強要するQualcommとは異なり、Wi-LANはチップメーカー各社からライセンス料や使用料を徴収する計画だと、同社では説明している。

 「われわれはQualcommのように冷酷ではない。市場のすべての機器メーカーを追い回すようなことは望まない。チップメーカーにライセンス料を支払わせる形をとれば、市場での技術革新を減速させるようなことにはならないだろう」(Wetherell)

 では、Wi-LANはなぜ、チップではなくネットワーク関連機器を製造するCiscoをターゲットにしているのだろうか。それには次のような理由がある。Wi-LANは2000年に、カナダのRadiataという小さな無線チップメーカーを提訴した。Ciscoは、この提訴の直後にRadiataを買収し、訴訟を引き継いだ。だが、Radiataが実際に販売できる製品を持っていないことが分かると、この裁判は間もなく却下されてしまった。Wetherellによると、Ciscoは当時、製品をカナダ国内で販売および宣伝する意図は全くない、と申し立てたという。

 Ciscoは、それ以後Radiataの業務を停止した。ところが同社は、AironetワイヤレスLAN製品に802.11a/g標準を利用してきた。また同社は、2003年にLinksysを買収すると、これらの標準を採用したほかのWi-Fi製品も販売するようになった。

 こうした経緯があることから、Ciscoをターゲットにするのは簡単なことだと、Wetherel は述べている。

 「この問題が持ち上がったのは、CiscoがRadiataを買収した2000年のことで、そのためCiscoがわれわれのことを知らなかったと言うほうが、ずっと難しいだろう」と同氏は述べ、さらに「われわれには失うものは何もない。もしこの訴訟が長引いて、解決までに2年かかったとしても、われわれが負担する費用はせいぜい200万ドル程度だ。それに対して、勝訴した場合に手にする見返りは、非常に大きい」と付け加えた。

 一方Ciscoでは、現在もこの件について検討を加えているところだという。

 「Wi-LANは、自社の持つ特許が業界標準に関連したものだと主張しており、この特許をWi-Fi関連業界全体に適用しようとしているようだ。われわれとしては、同社の主張内容に検討を加えた後に、しかるべき対応をとるつもりだ」と、Ciscoの関係者はコメントしている。

 Wi-LANは従業員数140人の小さな会社で、年間売上は1900万ドル。同社はトロントの証券取引所に上場しており、「WIN」のティッカーシンボルで取り引きされている。Wetherelによると、同社はライセンスからの収入だけに頼って生き延びる計画はないという。同社は現在WiMax標準に準拠したブロードバンド・ワイヤレス製品を開発中で、2005年中にはこれをリリースする予定だ。

 Wi-LANはすでにPhilips Semiconductorsとの間で、802.11a/g用チップセットに関するライセンス契約を結んでいる。また、Fujitsu Microelectronics Americaとは、同社が開発しているWiMaxアプリケーション用の新しいチップに関して、ライセンス契約を交わしている。同社では、CiscoおよびRedlineとの訴訟の結果を利用して、他の企業を説得し、交渉を法廷に持ち込まずに済ませたいと考えている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

 

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