国際電気通信連合(International Telecommunications Union:ITU)は、電話会社やインターネットサービスプロバイダが既存ネットワークを使ったイーサネットサービスを展開するのを容易にする新しい一連の技術標準を発表した。
「われわれはすでに実験フェイズを完了しており、互換性を持った製品を用意する必要がある」と、Lucent Technologiesのエンジニアで、ITUのスタディグループの副会長を務めるStephen Trowbridgeは語った。「一方がNortelの製品、もう一方がAlcatelやLucentの製品でも関係ない。通信キャリアに必要なのは業界標準だ」(Trowbridge)
イーサネットは30年前に開発されたものだが、企業ネットワーク上にあるコンピュータ同士を接続するための主要な技術となっている。現在、通信キャリアはこの技術を使い、複数の企業ネットワーク同士を接続して、広域をカバーする「MAN」(Metropolitan Area Network)を実現している。これらのイーサネットを経由すれば、企業が音声とデータのトラフィックを、IPネットワーク上で同時に送受信することが可能になる。
通信キャリアは、イーサネットを利用することで、より柔軟なサービスを展開できる。たとえば、顧客が10Mbpsから1Gbpsの範囲内で必要とする帯域幅を指定することも可能だ。
広域イーサネット(あるいは「メトロ・イーサネット」)と呼ばれるこの技術が、通信キャリアにとってはコスト削減につながることも期待されている。PointEast ResearchとMetro Ethernet Forumが1月に発表した調査によると、各電話会社は、従来の通信サービスに代えて、自社のメトロネットワーク内でイーサネットサービスを採用することで、年間で最大23%の運用コスト削減が図れるという。Metro Ethernet Forumは、機器ベンダやサービスプロバイダ各社がつくる、マーケティングを主眼とした業界団体だ。
従来、通信キャリアは企業ネットワーク同士の接続に、フレームリレーやATM(Asynchronous Transfer Mode)のような技術を使用してきた。これらのサービスは、通常はSONET/SDH(Synchronous Optical Network/Synchronous Digital Hierarchy)と呼ばれる光転送技術の上で動作する。ITUが先週発表した新しい仕様では、既存のSONET/SDHインフラ上にイーサネットをマッピングする方法が標準化されている。
純粋なイーサネットは、企業ネットワーク上ならうまく動作するが、SONET/SDHに組み込まれているようなトラブルシューティングのための高度なメカニズムがない、とTrowbridgeは指摘している。
SONET/SDHでは、たとえばネットワークに障害が起こった際にも、発生から50ミリ秒以内にこれを検出/回復できるようになっている。イーサネットはこのような自己修復機能は搭載しておらず、インターネットプロトコル(IP)の機能に頼っている。そのため、大規模なネットワークでは障害の回復に数秒かかることも多い。ベンダのなかには、イーサネットに新しい機能を追加し、信頼性を高めながらトラブルに対応しやすくしようとしているところもある。また、SONET/SDH技術上にイーサネットを重ね、通信キャリアが既存のインフラを活用できるようにしているベンダもある。
「ネットワークオペレータの環境を考えると、SONET/SDHとイーサネットの組み合わせのほうが、より現実的なソリューションだろう。さらに、現在ほとんどすべての通信機器ベンダがイーサネット接続用のインターフェースを備えるSONET/SDH機器を発売している点も有利だ」(Trowbridge)
Cisco SystemsやLucent、Nortel Networksなど、いくつかの通信機器メーカーでは、すでにこの市場向けの製品を開発済みだ。調査会社Infonetics Researchによると、実際2003年には各社あわせて29億ドル相当のメトロ・イーサネット用機器を販売したという。
この市場は、2007年にはおよそ75億ドルまで成長するとみられており、2003年から2007年までの4年間に全世界で240億ドル以上の投資が行われると、Infonetics Researchでは予想している。ITUがまとめたような技術標準により、ある各通信機器ベンダの製品間に互換性が生まれることで、通信キャリア各社によるメトロ・イーサネット技術の導入に拍車がかかることになる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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